【行為無価値】刑法の基本書紹介 - ほのぼのと司法試験に挑戦

【行為無価値】刑法の基本書紹介

刑法の基本書
11 /22 2016

 行為無価値の立場から書かれた基本書で、おすすめする基本書を3つ+α紹介したいと思います。行為無価値の基本書というと理論的一貫性がない(刑法の体系がしっかりしていない)という印象を持つ人もいるかもしれませんが、判例に依拠せず行為無価値の立場から学者が書いた基本書であれば、理論的一貫性が保たれていますし、そもそも判例に依拠しても司法試験レベルまでは問題にならないです。

 また、判例に沿った基本書は、学者の独自説に惑わされることがなく、癖のない基本書として使うことができるので、初学者の人には、判例に依拠した行為無価値の基本書(下記の(1))をおすすめします。


(1)司法協会 刑法総論講義案

 裁判所職員のために書かれた司法協会 刑法総論講義案です。判例の立場から書かれ、学説に翻弄されずに、不必要な学説を省き、読者に必要なことを分かりやすく伝えています。
 司法試験の刑法に必要な最小限の知識を理解させることに特化した基本書となっているので、広く様々な人におすすめできます。横書き483頁で書かれ上から下へすらすらと読むことができるので、特に、刑法を最初に勉強する人におすすめする基本書であり、また、学説の対立に疲れた人にもおすすめできる基本書です。

 詳しい感想は、司法協会 刑法総論講義案 の記事をご覧ください。


(2)基本刑法

 判例の見解に立ち、4人の学者が作った珍しい基本書です。
 最初の刑法の基本書としても使えるのですが、一般的な刑法基本書と同様に学説の紹介が多く立ち止まって考える必要に迫られるので、司法協会と比較すると、基本書を通読するには時間がかかります。それゆえ、初めて刑法を勉強する人にはおすすめしません。また、判例の引用も司法協会の方が多いです。
 基本刑法の利点としては、学者が最新の学説を踏まえて書かれているので、学説が重要視する論点に触れることができ、また、法科大学院生を意識して書かれているので、学生が勘違いしやすい点、難しいと感じる点についての記述があることが魅力的です。
 例えば、危険の現実化の論証の仕方を詳しく説明していることを挙げることができます。危険の現実化それ自体を扱っている書籍は多いですが、論証の仕方(言い換えれば実際の使い方)を説明するのは、私の知る限りこの基本書だけでしょう。実際、慶應法科大学院の入試では、基本刑法のこの部分の解説が役に立ちました。
 初学者が手にすべき基本書というよりも、司法試験の論文試験を強く意識した刑法の基本書という感じです。ある程度刑法を勉強した司法試験受験生にとって目から鱗が落ちる記述が多く、論文試験まで見据えた刑法の基本書が欲しいという人向けです。

 詳しい感想は、基本刑法 の記事をご覧ください。


(3)刑法総論 高橋則夫

 行為無価値の学者が書いた刑法総論の基本書です。
 判例というよりも、行為無価値の立場から書かれたものです。理論的な一貫性があるので、刑法を理論的に理解したい人におすすめする基本書です。また、共同正犯については、司法協会と親和性が高いので、司法協会の共同正犯について理解しづらいと感じるのであれば、この基本書を併用するのもひとつの手です。
 (以上は、第2版の感想です。最新版については、確認していません。)

 詳しい感想は、刑法総論 高橋則夫 の記事をご覧ください。


(4)井田良 講義刑法学・総論 という評価が高い刑法基本書もありますが、この刑法の基本書については読んでいません。ただ、上記3つの刑法基本書とならんで評判がいいので、検討してみる価値はあると思います。各論についても、講義刑法学・各論が、2016年12月5日に発売されています。


(5)刑法講義総論 大谷實
 大谷實先生の刑法基本書です。昔の司法試験受験生に愛されていた刑法の基本書であり、行為無価値に立ちます。社会的相当性に頼っている部分は多くなく、それでいて判例寄りの見解をうまく理由付けして示しているので、今なお使える基本書です。

■ (行為無価値)刑法の基本書のまとめ


 刑法を始めて勉強する人、また、勉強量を抑えたいと考えている司法書士、公務員試験対策には、(1)刑法総論講義案 司法協会をおすすめします。結果無価値の基本書を使うと判例との整合性を調べる必要性が出てきますが、判例に準拠する刑法総論講義案であれば判例の整合性を考えずに使用することができるので、勉強の効率が上がります。
 司法試験受験生で、行為無価値の刑法基本書を使いたいと考える人であれば、(1)、(2)どちらかの基本書を使うことをおすすめします。



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水刀

2017年4月、LSに入学しました。