法律トレビア - ほのぼのと司法試験に挑戦

タクシー料金(運賃)が法律によって規制されている理由

法律トレビア
03 /02 2017

 タクシー料金(運賃)は、法律によって規制されています。例えば、2017年1月30日に、東京23区で、初乗運賃は1052mまで410円、加算運賃は1052m以後237mごとに80円に引き下げられましたが、これを最終的に承認したのは、国土交通省です。なぜ、タクシーの料金設定に国の関与が必要になり、また、タクシー運転手が自由に料金を決定できないのでしょうか。

 実は、道路運送法9条1項では、「一般乗合旅客自動車運送事業(タクシー事業を含む)を経営する者(…)は、旅客の運賃及び料金(…)の上限を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。」と規定されているために、運賃を自由に決めることができないのです。

 では、そもそもどうしてこのような規定を置いているのでしょうか。

 最高裁(最判 平成11年7月19日( 集民第193号571頁))は、「一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的」として規定されているものだと言っています。

 要するに、タクシーは、バスや電車と同様に(同じレベルで公共性があるのかはともかく一定程度)公共性のある乗り物であるから、価格競争によってタクシー運転主、事業者の共倒れを防ぎ、また、不当な価格競争を回避して、タクシー運転手の労働環境や運行上の安全を確保し、利用者の利益を保護することを目的として、タクシーの価格(運賃)決定に国が関与し、国は上記趣旨に反する価格決定を阻止できるとしたのです。

◆まとめ◆
 タクシー料金(運賃)が法律によって規制されている理由は、タクシー運転手やタクシーの利用者のために、法律による規制が行う必要性があるからなのです。





◆最判 平成11年7月19日( 集民第193号571頁)
 1 道路運送法(以下「法」という。)は、「タクシー事業を含む一般旅客自動車運送事業につき、四条ないし七条において、その事業の経営についての免許制を規定するとともに、九条一項において、一般旅客自動車運送事業者は、運賃を定め、又はこれを変更しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならないとし、同条二項において、その認可基準を定めている(なお、一般乗用旅客自動車運送事業に係る運輸大臣の右権限は、法八八条一項一号、道路運送法施行令一条二項により、地方運輸局長に委任されている。)。そして、法九条二項一号は、運賃の設定及び変更の認可基準の一として前記基準を定めているが、その趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたものと解するのが相当である。
 右のような同号の趣旨にかんがみると、運賃の値上げを内容とする運賃変更の認可申請がされた場合において、変更に係る運賃の額が能率的な経営の下における適正な原価を償うことができないときは、たとい右値上げにより一定の利潤を得ることができるとしても、同号の基準に適合しないものと解すべきである。そして、同号の基準は抽象的、概括的なものであり、右基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。
 2 ところで、本件申請がされた当時、タクシー事業の運賃変更の認可について、「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃改定要否の検討基準及び運賃原価算定基準について」(昭和四八年七月二六日付け自旅第二七三号自動車局長から各陸運局長あて依命通達。以下「本件通達」という。)が定められており、各地方運輸局においては、本件通達に定められた方式に従った事務処理が行われていた。その概要は、地方運輸局長は、同一運賃を適用する事業区域を定め、当該区域の事業者の中から不適当な者を除外して標準能率事業者を選定し、さらに、標準能率事業者の中からその実績加重平均収支率が標準能率事業者のそれを下回らないように原価計算対象事業者を選定し、右事業者について本件通達別紙(2)の「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃原価算定基準」(以下「運賃原価算定基準」という。)に従って適正利潤を含む運賃原価を人件費等の原価要素の分類に従って算定した上、その平均値を基に運賃の値上げ率を算定する(この算定方式を「平均原価方式」という。)、というものである。
 本件通達の定める運賃原価算定基準に示された原価計算の方法は、法九条二項一号の基準に適合するか否かの具体的判断基準として合理性を有するといえる。そして、タクシー事業は運賃原価を構成する要素がほぼ共通と考えられる上、その中でも人件費が原価の相当部分を占めるものであり、また、同じ地域では賃金水準や一般物価水準といった経済情勢はほぼ同じであると考えられるから、当該同一地域内では、同号にいう「能率的な経営の下における適正な原価」は各事業者にとってほぼ同じようなものになると考えられる。したがって、平均原価方式に従って算定された額をもって当該同一地域内のタクシー事業者に対する運賃の設定又は変更の認可の基準とし、右の額を変更後の運賃の額とする運賃変更の認可申請については、特段の事情のない限り同号の基準に適合しているものと判断することも、地方運輸局長の前記裁量権の行使として是認し得るところである。もっとも、タクシー事業者が平均原価方式により算定された額と異なる運賃額を内容とする運賃の設定又は変更の認可申請をし、右運賃額が同号の基準に適合することを明らかにするため道路運送法施行規則(平成七年運輸省令第一四号による改正前のもの)一〇条二項所定の原価計算書その他運賃の額の算出の基礎を記載した書類を提出した場合には、地方運輸局長は、当該申請について法九条二項一号の基準に適合しているか否かを右提出書類に基づいて個別に審査判断すべきであることはいうまでもない。
 3 前記事実関係等によれば、被上告人らの本件申請に係る運賃の額は、本件申請の直前に近畿運輸局長が同業他社に対してした認可に係る運賃の額(右運賃の額は本件通達の定める平均原価方式に従って算定されたものと推認される。)を下回るものであったが、同局長は、本件申請に係る運賃の額が右認可に係る運賃の額に達しないものであることのみを理由として直ちに本件却下決定をしたのではなく、本件申請に対する許否の判断に当たり、被上告人らの提出する原価計算書その他の書類に基づき、本件申請に係る運賃の変更が法九条二項一号の基準に適合するか否かを運賃原価算定基準に準拠して個別に審査しようとしたものと解される。前示のとおり、運賃原価算定基準に示された原価計算の方法は、同号の基準に適合するか否かの具体的判断基準として、合理性を有するものであるから、同局長において本件申請に係る運賃の変更が同号の基準に適合するか否かを運賃原価算定基準に準拠して個別に審査しようとしたことは、相当な措置であったというべきである。しかるに、前記事実関係等によれば、同局長が右審査のために被上告人らに対して右原価計算書に記載された原価計算の算定根拠等について説明を求めたにもかかわらず、被上告人らは、運賃変更の理由は消費税の転嫁である旨の陳述をしたのみで、右原価計算の算定根拠等を明らかにしなかったというのであるから、同局長において被上告人らの提出した書類によっては被上告人らの採用した原価計算の合理性について審査判断することができなかったものということができる。そうであるとすれば、【要旨】本件申請について、同号の基準に適合するか否かを判断するに足りるだけの資料の提出がないとして、本件却下決定をした同局長の判断に、その裁量権を逸脱し、又はこれを濫用した違法はないというべきである。
 四 以上によれば、原審の前記判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決は、その余の点について判断するまでもなく、破棄を免れない。そして、前示のとおり、被上告人らの本件損害賠償請求は、本件却下決定が違法であり、近畿運輸局長は本件申請を認可すべきであったことを前提とするものであるから、右請求はいずれも理由がないことに帰する。」(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62781から、一部引用)。

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髪の毛を勝手に切った場合の犯罪は?

法律トレビア
12 /18 2016

 他人の髪の毛を勝手に切った場合に、犯罪が成立するのか。成立するとして、いかなる犯罪が成立するのでしょうか。

 裁判所の見解
 非常に古い明治時代の判例として、大判明45年6月20日が、髪の毛を切る行為について、直ちに健康状態の不良変更をきたさないとして、傷害罪は成立しないが、暴行罪が成立すると判断しています。

 そもそも傷害罪と暴行罪の違いは?
 誤解を恐れずに平たく言えば、殴る・蹴るなどの攻撃によって、「傷害」という結果が現れたのが傷害罪で、「傷害」という結果が生じないのが暴行罪です。傷害罪の方が重い犯罪とされ、法定刑で「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定され、暴行罪の「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」の法定刑と比較すれば、非常に重い犯罪であることが分かります。

 ただ、この「傷害」という概念が曲者で、現状判例通説が、”人の生理的機能を害すること”と定義していますが、身体の完全性を害することという見解も存在しているところです。そのため、理論的に、髪の毛を勝手に切った場合にいかなる犯罪が成立するのかということに決着が付いているというわけではありません。

 2016年12月5日に電車で髪の毛を売るために切った者が傷害容疑で逮捕されたいることが、ニュースになっていましたが、いかんせん裁判所の見解が、明治時代のものですから、今回傷害罪で処罰を受けることがあるかもしれません。

著作権判例百選が著作権侵害を主張され出版差止めを受けたが、逆転勝訴で著作権判例百選が出版される。

法律トレビア
12 /13 2016

 著作権判例百選 第5版は、著作権侵害を主張され、東京地裁から出版差し止めの仮処分を受けていました。ミイラ取りがミイラになった話として法律に興味がない人にも、それなりに話題になっていたと思います。
 しかし、抗告審たる知財高裁が地裁判決を覆し、出版差止を求めた者は、著作権者ではないとして、出版差止めの地裁決定を取り消しました。そして、これを受けて有斐閣は、2016年12月13日に同判例百選を出版するそうです。
 ちなみに、ミイラ取りがミイラになっただけでなく、そもそも法律的にも重要な事件であり、著作権法違反の場合における出版差止めは、表現の自由との関係でいかなる場合に許されるのかという論点や、編集著作者はいかなる場合に認められるのか(編集著作者該当性の分水嶺はどこなのか)という論点などを含み、著作権法領域で重要な判例としても注目を集めています。

 そもそも判例百選とは?
 判例百選は、有斐閣から出版されている法律系の雑誌であり、その法分野における重要な判例をだいたい100件集めたものです。法学部、法科大学院、司法試験受験生が良く使う教材で、憲法判例百選、刑事訴訟法判例百選などは司法試験受験生にはほぼ必携と一冊となっている有名な雑誌です。
 1件1件の事件について、事案の概要、判旨、解説がなされ、解説は1件1件別々の教授・実務家によって書かれています。

 これまでの一連の裁判は何が争われたのか?
 判例百選はその性質上100人以上の人により書かれていますが、どのような判例を扱い、誰が原稿を書くのかということを決定する必要があり、その役を担った人は、編者として表紙に名前が載ります。著作権判例百選 5版であれば、小泉 直樹、 田村 善之、 駒田 泰土、 上野 達弘 の4名が編者として表紙に名前が表示されています。
 著作権判例百選 第5版においても、どのような判例を扱い、誰が原稿を書くのかについて少人数でメール等で話し合われたそうなのですが、メールで連絡を取り合った教授の一人が、表紙に名前を表示させてもらえませんでした。そこで、この教授が、私は編者であり、「編集著作者」であるから、氏名を表示するかしないかの決定権を有するにも関わらず、氏名を表示せずに出版することは違法であり許されないとして、出版差止めを求めたのです。
 要は、この裁判、「私は編者であるのに、表紙に名前が載らなかったので、訴えてやる」というものです。

 法律的には、著作権法19条1項本文には、「著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。」と規定されているので、これを根拠とし、同法112条による出版差止めを請求したのです。

 結論
 これまでに抗告審の決定は出されていますが、仮処分に対する決定であるので、まだまだ争い続ける可能性もあります。というか、まだ決着するまでもう一ラウンドあると思います。

 これまでのところは、知的財産高等裁判所での判断で、差止請求者は、著作権者ではないとして、表紙に名前が表示されないのは当然であるとしています。


薬事法とブログ

法律トレビア
11 /11 2016

 薬事法66条1項で、「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」と規定されている。そのため、ブログ運営者としては、医薬品等の効果について、虚偽又は誇大な記事を記述することができない。そして、これに反した場合、「二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」(同法85条柱書、同4号)という刑罰が科される場合がある。

 問題は、「虚偽又は誇大な記事」とは、いかなるもの言うのかである。

 これについては、医薬品等適正広告基準が、それなりに具体的な指針を示している。同基準の全文をweb上で探すことはできなかったが、wikipediaの医薬品等適正広告基準 の記事は非常に分かりやすいので、見ていただきたいと思う。

 「よく効く」という表現ですら、保証的な表現として同基準3(6)に反するという見解もある(※1)ため、医薬品の記事を書く際は細心の注意をしなければならないところである。


 法の不知はこれを許さずという法諺があるように、知らなかったでは許されないので、医薬品等についての記事を書く際には気をつけようと思う。

(※1)http://www.yakujihou.com/oshiete/faq_050003.html から

ホットポテト理論

法律トレビア
10 /07 2016

 ホットポテト理論を知っているだろうか。

 この記事は、心理学にいう椅子取りゲームなどで「傷つきやすく、支配されやすく、いじめやすそうな人」が負けやすいという理論ではなく、もちろん英語のイディオムにおける「取り扱いにくい問題」という意味でもない、法律学における一分野である法曹倫理におけるホットポテト理論についての記事である。

 ある法律事務所に勤めている弁護士がA企業から依頼を受け、別の法律事務所に勤めている弁護士がA企業から損害を受けたと主張する個人の依頼を受けたとする。この2つの事務所が合併をしたとき、事務所内で依頼人の利害が対立することになる。つまり、事務所として、企業の最大の利益と個人の最大の利益を両立する判決、紛争解決を目指すことができないことになったのである。

 このような場合、少なくともどちらかの弁護契約を解除する必要がある。そして、法律事務所としては、高額な報酬を用意する企業の依頼を優先し、個人との弁護契約を解除したいと考えるのが経済的に合理的である。

 しかし、弁護士倫理を考えたとき、個人の依頼人の弁護契約を解除し、依頼人をホットポテトを投げ捨てるように扱ってはならないのである(ホットポテト理論)。したがって、この場合は、両者の弁護契約を打ち切る必要がある。

 
 そう、法律家は、依頼人のため「傷つきやすく、支配されやすく、いじめやすそうな人」になってホットポテトを投げつけられてもいけないし、また、ホットポテトを投げ捨ててもいけない職業なのである。


水刀

2017年4月、LSに入学しました。