刑事訴訟法 - ほのぼのと司法試験に挑戦

刑事訴訟法の基本書

刑事訴訟法
08 /11 2017

 刑訴基本書の決定版といったものが司法試験受験生界には存在しないように感じます。そのため、おすすめの基本書を絞り込むのは難しかったです。個人的におすすめの基本書を紹介していきます。なお、判例集、予備校本等も紹介しています。



初心者用の刑事訴訟法の基本書



本格的な刑事訴訟法の基本書




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GPS捜査に関する最高裁判決の判決文、感想 - 最判平成29年3月15日

刑事訴訟法
03 /16 2017

 憲法、刑事訴訟法の分野において議論されてきたGPS捜査に関する最高裁判決が出されました。簡単な感想については下記に記しましたが、学説の評価が出てきてからさらに詳しく書こうと思います。テレビのニュースやにほんブログ村 司法試験予備試験でも話題となり、最高裁大法廷で審理されたことからも非常に重要な判決です。2017(平成29)年5月13日に発売された刑事訴訟法判例百選にも掲載された重要判例です。

 以下、囲みの部分が判決全文です。

平成28年(あ)第442号 窃盗,建造物侵入,傷害被告事件
平成29年3月15日 大法廷判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
 弁護人亀石倫子ほかの上告趣意のうち,憲法35条違反をいう点は,後記のとおり,原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかであり,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
以下,所論に鑑み,車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査(以下「GPS捜査」という。)の適法性等に関する原判決の判断の当否について,判断を示す。
1 事案の概要
 原判決及び第1審裁判所の平成27年6月5日付け決定によれば,本件においては,被告人が複数の共犯者と共に犯したと疑われていた窃盗事件に関し,組織性の有無,程度や組織内における被告人の役割を含む犯行の全容を解明するための捜査の一環として,平成25年5月23日頃から同年12月4日頃までの約6か月半の間,被告人,共犯者のほか,被告人の知人女性も使用する蓋然性があった自動車等合計19台に,同人らの承諾なく,かつ,令状を取得することなく,GPS端末を取り付けた上,その所在を検索して移動状況を把握するという方法によりGPS捜査が実施された(以下,この捜査を「本件GPS捜査」という。)。
2 第1審及び原審の判断の要旨
(1) 第1審裁判所は,本件GPS捜査は検証の性質を有する強制の処分(刑訴法197条1項ただし書)に当たり,検証許可状を取得することなく行われた本件GPS捜査には重大な違法がある旨の判断を示した上,本件GPS捜査により直接得られた証拠及びこれに密接に関連する証拠の証拠能力を否定したが,その余の証拠に基づき被告人を有罪と認定した。
(2) これに対し,原判決は,本件GPS捜査により取得可能な情報はGPS端末を取り付けた車両の所在位置に限られるなどプライバシーの侵害の程度は必ずしも大きいものではなかったというべき事情があること,被告人らの行動確認を行っていく上で,尾行や張り込みと併せて本件GPS捜査を実施する必要性が認められる状況にあったこと,本件GPS捜査が強制の処分に当たり,無令状でこれを行った点において違法と解する余地がないわけではないとしても,令状発付の実体的要件は満たしていたと考え得ること,本件GPS捜査が行われていた頃までに,これを強制の処分と解する司法判断が示されたり,定着したりしていたわけではなく,その実施に当たり,警察官らにおいて令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があったとまでは認め難いこと,また,GPS捜査が強制処分法定主義に反し令状の有無を問わず適法に実施し得ないものと解することも到底できないことなどを理由に,本件GPS捜査に重大な違法があったとはいえないと説示して,第1審判決が証拠能力を否定しなかったその余の証拠についてその証拠能力を否定せず,被告人の控訴を棄却した。
3 当裁判所の判断
 そこで検討すると,原判決の前記2(2)の説示に係る判断は是認できない。その理由は,次のとおりである。
(1) GPS捜査は,対象車両の時々刻々の位置情報を検索し,把握すべく行われるものであるが,その性質上,公道上のもののみならず,個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて,対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする。このような捜査手法は,個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るものであり,また,そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において,公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである。
(2) 憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である。そうすると,前記のとおり,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集30巻2号187頁参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである。
(3) 原判決は,GPS捜査について,令状発付の可能性に触れつつ,強制処分法定主義に反し令状の有無を問わず適法に実施し得ないものと解することも到底できないと説示しているところ,捜査及び令状発付の実務への影響に鑑み,この点についても検討する。
 GPS捜査は,情報機器の画面表示を読み取って対象車両の所在と移動状況を把握する点では刑訴法上の「検証」と同様の性質を有するものの,対象車両にGPS端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行う点において,「検証」では捉えきれない性質を有することも否定し難い。仮に,検証許可状の発付を受け,あるいはそれと併せて捜索許可状の発付を受けて行うとしても,GPS捜査は,GPS端末を取り付けた対象車両の所在の検索を通じて対象車両の使用者の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うものであって,GPS端末を取り付けるべき車両及び罪名を特定しただけでは被疑事実と関係のない使用者の行動の過剰な把握を抑制することができず,裁判官による令状請求の審査を要することとされている趣旨を満たすことができないおそれがある。さらに,GPS捜査は,被疑者らに知られず秘かに行うのでなければ意味がなく,事前の令状呈示を行うことは想定できない。刑訴法上の各種強制の処分については,手続の公正の担保の趣旨から原則として事前の令状呈示が求められており(同法222条1項,110条),他の手段で同趣旨が図られ得るのであれば事前の令状呈示が絶対的な要請であるとは解されないとしても,これに代わる公正の担保の手段が仕組みとして確保されていないのでは,適正手続の保障という観点から問題が残る。
 これらの問題を解消するための手段として,一般的には,実施可能期間の限定,第三者の立会い,事後の通知等様々なものが考えられるところ,捜査の実効性にも配慮しつつどのような手段を選択するかは,刑訴法197条1項ただし書の趣旨に照らし,第一次的には立法府に委ねられていると解される。仮に法解釈により刑訴法上の強制の処分として許容するのであれば,以上のような問題を解消するため,裁判官が発する令状に様々な条件を付す必要が生じるが,事案ごとに,令状請求の審査を担当する裁判官の判断により,多様な選択肢の中から的確な条件の選択が行われない限り是認できないような強制の処分を認めることは,「強制の処分は,この法律に特別の定のある場合でなければ,これをすることができない」と規定する同項ただし書の趣旨に沿うものとはいえない。
 以上のとおり,GPS捜査について,刑訴法197条1項ただし書の「この法律に特別の定のある場合」に当たるとして同法が規定する令状を発付することには疑義がある。GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば,その特質に着目して憲法,刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい。
(4) 以上と異なる前記2(2)の説示に係る原判断は,憲法及び刑訴法の解釈適用を誤っており,是認できない。
4 しかしながら,本件GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠の証拠能力を否定する一方で,その余の証拠につき,同捜査に密接に関連するとまでは認められないとして証拠能力を肯定し,これに基づき被告人を有罪と認定した第1審判決は正当であり,第1審判決を維持した原判決の結論に誤りはないから,原判決の前記法令の解釈適用の誤りは判決に影響を及ぼすものではないことが明らかである。
 よって,刑訴法410条1項ただし書,414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官岡部喜代子,同大谷剛彦,同池上政幸の補足意見がある。
 裁判官岡部喜代子,同大谷剛彦,同池上政幸の補足意見は,次のとおりである。
 私たちは,GPS捜査の特質に着目した立法的な措置が講じられることがあるべき姿であるとの法廷意見に示された立場に賛同するものであるが,今後立法が具体的に検討されることになったとしても,法制化されるまでには一定の時間を要することもあると推察されるところ,それまでの間,裁判官の審査を受けてGPS捜査を実施することが全く否定されるべきものではないと考える。
 もとより,これを認めるとしても,本来的に求められるべきところとは異なった令状によるものとなる以上,刑訴法1条の精神を踏まえたすぐれて高度の司法判断として是認できるような場合に限定されよう。したがって,ごく限られた極めて重大な犯罪の捜査のため,対象車両の使用者の行動の継続的,網羅的な把握が不可欠であるとの意味で,高度の必要性が要求される。さらに,この場合においても,令状の請求及び発付は,法廷意見に判示された各点について十分配慮した上で行われなければならないことはいうまでもない。このように,上記のような令状の発付が認められる余地があるとしても,そのためには,ごく限られた特別の事情の下での極めて慎重な判断が求められるといえよう。

検察官榊󠄀原一夫,同宇川春彦 公判出席
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官大橋正春 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 木内道祥 裁判官山本庸幸 裁判官 山崎敏充 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 菅野博之 裁判官 山口 厚)


GPS捜査に関する最高裁判決(最判平成29年3月15日)の感想・まとめ
 GPS捜査が強制処分にあたることや、強制処分法定主義と令状主義を峻別していること、強制処分の判断において「個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するもの」という基準を使っていること、手続の公正の担保と強制処分の立法的なコントロールの観点から、(補足意見を参考にしつつ考えると)一部の重大な犯罪で高度な必要性が認められる場合を除いては、GPS捜査を行うためには立法が必要があることについて、最高裁は判断したと考えることができます。

 強制処分の論証の記事について、現状記事の変更をする余裕はありませんが、「個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するもの」という基準に変更すべきかどうかについては、考える必要があるかもしれません。(ただし、この部分を除いては、論証の変更は不要と考えています。)

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刑事訴訟法235条のまとめ

刑事訴訟法
02 /22 2017

 刑事訴訟法235条のまとめです。解説においては、刑法条文の指摘が多いので、罪名でわかるようにしました。

刑事訴訟法235条  親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。
一  刑法第百七十六条 から第百七十八条 まで、第二百二十五条若しくは第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴
二  刑法第二百三十二条第二項 の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条 又は第二百三十一条 の罪につきその使節が行う告訴
○2  刑法第二百二十九条 但書の場合における告訴は、婚姻の無効又は取消の裁判が確定した日から六箇月以内にこれをしなければ、その効力がない。



刑事訴訟法235条1項本文、但書

 原則的には告訴に期間制限はなく、いつでも告訴できることを前提に、親告罪の告訴については、例外的に、6ヶ月を経過した場合には告訴できなくなること、起算点が「犯人を知った日」であることを定めています。その趣旨は、被害者の意思によって必要以上に法的安定性を害するのは相当ではないため、告訴期間を設定することにあります。
 但書(柱書き)は、この例外の例外として、親告罪で告訴期間の制限がない犯罪類型を、1号、2号で規定しています。


刑事訴訟法235条1項1号

 (1)強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦罪という性犯罪について、(2)営利目的等略取及び誘拐罪と、同罪を幇助する被略取者引渡し等罪、営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的での被略取者引渡し等罪という一定の拐取関連の犯罪については、例外的に6ヶ月を経過しても告訴できることを規定しています。なお、刑法172条の2に規定される集団強姦等罪については、そもそも告訴を要する親告罪ではありませんから、同号に規定されていません。


刑事訴訟法235条1項2号

 名誉毀損罪、侮辱罪について、「告訴をすることができる者が…、外国の君主又は大統領であるとき」に、「その国の代表者が…代わって告訴を行う」場合は、告訴期間制限の例外にあたることを規定しています。

刑事訴訟法235条2項

 刑法229条但書には、一定の拐取関連の犯罪について、「略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときは、婚姻の無効又は取消しの裁判が確定した後でなければ、告訴の効力がない。」と規定されているので、婚姻の無効又は取消の裁判が確定した日から告訴期間が進行することを規定しています。
 

改正刑事訴訟法316条の14

刑事訴訟法
02 /18 2017




 証拠開示制度の拡充として、公判前整理手続等における証拠の一覧表の交付制度が開始されました。同制度は、改正刑事訴訟法316条の14に規定されているので、同法の紹介をしたいと思います。

 旧法では、

 検察官は、前条第2項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
1号:証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
2号:証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等(供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したものをいう。以下同じ。)のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあっては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。

 となっていましたが、
 改正刑事訴訟法316条の14では、

○1 検察官は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
一  証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
二  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
○2  検察官は、前項の規定による証拠の開示をした後、被告人又は弁護人から請求があつたときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表の交付をしなければならない。
○3  前項の一覧表には、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、証拠ごとに、当該各号に定める事項を記載しなければならない。
一  証拠物 品名及び数量
二  供述を録取した書面で供述者の署名又は押印のあるもの 当該書面の標目、作成の年月日及び供述者の氏名
三  証拠書類(前号に掲げるものを除く。) 当該証拠書類の標目、作成の年月日及び作成者の氏名
○4  前項の規定にかかわらず、検察官は、同項の規定により第二項の一覧表に記載すべき事項であつて、これを記載することにより次に掲げるおそれがあると認めるものは、同項の一覧表に記載しないことができる。
一  人の身体若しくは財産に害を加え又は人を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
二  人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
三  犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障を生ずるおそれ
○5  検察官は、第二項の規定により一覧表の交付をした後、証拠を新たに保管するに至つたときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、当該新たに保管するに至つた証拠の一覧表の交付をしなければならない。この場合においては、前二項の規定を準用する。


 と規定されています。

 2項で、証拠の一覧表の交付をすることが原則であり、4項で、非開示の例外を定めるという規定の仕方になっていますが、これが原則、例外の規定通りに機能していくのかは、これからの法律家の努力にかかってくるでしょう。昔の接見交通権のようにならないような運用が望まれるところです。




憲法38条3項にいう「本人の自白」に公判廷における自白が含まれるか - 最判昭和23年7月29日

刑事訴訟法
02 /14 2017

 最判昭和23年7月29日が、憲法38条3項にいう「本人の自白」に公判廷における自白が含まれるかについて論じているので、紹介と解説をします。


 憲法38条3項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と規定しています。同項の「本人の自白」の意味について、最高裁は以下のように判断しました。


最判昭和23年7月29日判決文(一部抜粋)

 「自白の問題は、日々の裁判の現実において最も重要な憲法問題の一つである。憲法第三十八条第三項には、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と定めている。この規定の趣旨は、一般に自白が往々にして、強制、拷問、脅迫その他不当な干渉による恐怖と不安の下に、本人の真意と自由意思に反してなされる場合のあることを考慮した結果、被告人に不利益な証拠が本人の自白である場合には、他に適当なこれを裏書する補強証拠を必要とするものとし、若し自白が被告人に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪の認定を受けることはないとしたものである。それは、罪ある者が時に処罰を免れることがあつても、罪なき者が時に処罰を受けるよりは、社会福祉のためによいという根本思想に基くものである。かくて真に罪なき者が処罰せられる危険を排除し、自白偏重と自白強要の弊を防止し、基本的人権の保護を期せんとしたものである。しかしながら、公判廷における被告人の自白は、身体の拘束をうけず、又強制、拷問、脅迫その他不当な干渉を受けることなく、自由の状態において供述されるものである。しかも、憲法第三十八条第一項によれば、「何人も自己に不利益な供述を強要されない」ことになつている。それ故、公判廷において被告人は、自己の真意に反してまで軽々しく自白し、真実にあらざる自己に不利益な供述をするようなことはないと見るのが相当であろう。又新憲法の下においては、被告人はいつでも弁護士を附け得られる建前になつているから、若し被告人が虚偽の自白をしたと認められる場合には、その弁護士は直ちに再訊問の方法によつてこれを訂正せしめることもできるであろう。なお、公判廷の自白は、裁判所の直接審理に基くものである。従つて、裁判所の面前でなされる自白は、被告人の発言、挙動、顏色、態度並びにこれらの変化等からも、その真実に合するか、否か、又、自発的な任意のものであるか、否かは、多くの場合において裁判所が他の証拠を待つまでもなく、自ら判断し得るものと言わなければならない。又、公判廷外の自白は、それ自身既に完結している自白であつて、果していかなる状態において、いかなる事情の下に、いかなる動機から、いかにして供述が形成されたかの経路は全く不明であるが、公判廷の自白は、裁判所の面前で親しくつぎつぎに供述が展開されて行くものであるから、現行法の下では裁判所はその心証が得られるまで種々の面と観点から被告人を根掘り葉掘り十分訊問することもできるのである。そして、若し裁判所が心証を得なければ自白は固より証拠価値がなく、裁判所が心証を得たときに初めて自白は証拠として役立つのである。従つて、公判廷における被告人の自白が、裁判所の自由心証によつて真実に合するものと認められる場合には、公判廷外における被告人の自白とは異り、更に他の補強証拠を要せずして犯罪事実の認定ができると解するのが相当である。すなわち、前記法条のいわゆる「本人の自白」には、公判廷における被告人の自白を含まないと解釈するを相当とする。
 さらに、証拠価値論の見地から観察してみよう。(一)強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、証拠能力を有しない(憲法第三十八条第二項)。かゝる種類の自白は、憲法上は全く信用力がなく全面的に証拠価値を否定せられておるから、これを証拠として断罪科刑することはできない。(二)その他の自白は、公判廷におけるものも又公判廷外におけるものも、等しく証拠能力を有するが、証拠価値にはおのずから差等が存する。その中公判廷外における自白は、強制、拷問若しくは脅迫による自白であるか否かが一般的に不明であり、前述の理由によつて証拠価値が比較的少いものであるから、その自白の外に適当なこれを裏書する補強証拠が必要となる訳である。(三)これに反し、公判廷における自白は、前に詳述した理由によつてその証拠価値が比較的多いものであるから、その自白が被告人に不利益な唯一の証拠である場合においてもこれを証拠として断罪科刑することができていい訳である。
 往昔の裁判は、断罪に被告人の自白を必要条件とし、自白がなければ、処罰ができなかつた時代がある。かかる制度の下においては、必然的に被告人の自白を強要するために拷問が行われるに至ることは当然であり、今日なお諸国に残存する多種多様の拷問器が如実にこれを実証している。この弊害を救うために、(イ)所罰には必ずしも自白を必要条件としなくなり、(ロ)被告人には自白を強要せられない沈黙の特権が認められ(憲法第三十八条第一項)(ハ)拷問等による自白には、証拠能力が認められなくなり(同条第二項)、かくて裁判手続の上に拷問等が漸次排除せられていつたのである。されば、同条第三項の解釈として、拷問等によらざることが明白である公判廷の自白に、一般的、抽象的により多くの証拠価値を認め独立証拠性を認めると共に、拷問等によつたか否かが不明である公判廷外の自白に、一般的、抽象的により少き証拠価値を認め補強証拠を要するものと解することは、毫も拷問と自白の歴史に背反するところはなく、現行法制の下においては極めて合理的な妥当な解釈であると言わなければならない。又、或る時代においては、証人の供述も半証拠(ハーフ・プルーフ)の価値しかなく、二人の証人の供述が合致して初めて独立証拠価値を有した。米国憲法第三条第三項に、「何人も同一の犯行に対する二人の証人の証言又は公開の法廷における自白がなければ、叛逆罪によつて処罰をうけることがない」とあるのもこの流を汲むもので、米国の叛逆罪においては証人一人の供述は半証拠の価値しかないが、被告人の公判廷における自白は、それだけで独立証拠の価値を認められている。或は「罪がない者でも色々複雑な原因から任意に自己に不利益な供述をすることがある」から、自白が唯一の証拠である場合には処罰できないという者があるが、これは誤りである。この論法をもつてすれば、「証人でも色々複雑な原因から任意に(故意に)被告人に不利益な供述をすることがある」から、証人の供述が唯一の証拠である場合にも処罰できないという結論とならなければならない。しかし、わが憲法は明らかに証人の供述は唯一の証拠であつても独立証拠の価値を認め断罪し得るものとしている。これに対し、憲法第三十八条第三項においては、被告人の自白が唯一の証拠である場合には処罰できないものとしている。それ故、同項の意義は、証人の供述と被告人の自白の価値を何故に区別しているかの理由を深く究めることによつてのみ真に理解され得る関係ある。そして、この区別は、畢竟被告人の自白には拷問等の加わるおそれが濃厚であるに反し、証人の供述にはかかるおそれが濃厚でないという一点に要約することができる。されば、拷問等の加わらない公判廷の自白に一証人の供述と同様に独立証拠性を認めることは、現行法制の下においては、理の当然であると言うことができよう。証人の供述にも、被告人の自白にも同時に内在し得る不安(例えば色々の複雑な原因から任意に不利益な供述をすること)が、被告人の自白に内在することを理由として被告人の自白に独立証拠性を否定せんとするは、証人の供述に独立拠性を認めているわが憲法下においては、他に特別の立法なき限り到底是認することができない。それ故、被告人の自白に独立証拠性を否定し、補強証拠を必要とする場合は、拷問等の加わつたか否かが不明である場合、すなわち公判廷外の自白に限られるのである。
 さればと言つて、公判廷における被告人の自白があつたとしても、安易に直ちにこれを証拠として断罪し去るととは、早計であり固より許さるべきことではない。裁判の任に当る者は、飽くまで自由心証の下に自白の任意性、真実性につき自由心証を形成し得た場合においてのみ、断罪し、科刑し得るものであることを深く戒心しなければならぬ。自白規定を設けた憲法の精神もまたこゝにあると確信する。」(最判昭和23年7月29日から)

公判挺における本人の自白のまとめ

 以上のように、憲法38条3項にいう「本人の自白」に公判廷における自白は含まれず、憲法上、公判廷における自白のみで有罪判決を下せると判示しています。ただし、注意しなければならないのが、最判昭和23年7月29日は、憲法上、公判廷での自白のみで有罪判決を下すことができないという旨の立法をすることを禁止する趣旨ではないことです。

 そして、実際に、刑事訴訟法319条2項で「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定されているので、公判廷における自白のみで有罪判決を下すことはできません。

 憲法レベルでの議論と、刑事訴訟法の規定が、一見矛盾しているように思えるため、勘違いしている人も多いと思い、ここに紹介と解説をしました。




※目次が作動しないなどの不具合がありましたら、コメントいただけると嬉しいです。

水刀

2017年4月、LSに入学しました。