民事訴訟法 - ほのぼのと司法試験に挑戦

最判平成22年3月16日

民事訴訟法
02 /19 2017

  固有必要的共同訴訟において合一確定の要請に反する判決がされた場合と不利益変更禁止の原則の関係について判断した最判 平成22年3月16日の判決文の紹介です。

第2 職権による検討
…(省略)…
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,平成17年12月17日に死亡した。
(2) 上告人Y2,同Y1及び被上告人は,いずれもAの子である。
(3) 上告人Y2は,第1審判決別紙のとおりのA名義の遺言書を偽造した。
2 本件は,被上告人が,上告人らに対し,上告人Y2が民法891条5号所定の相続欠格者に当たるとして,同Y2がAの相続財産につき相続人の地位を有しないことの確認等を求める事案である(以下,上記確認請求を「本件請求」という。)。
3 第1審は,本件請求を棄却したため,被上告人がこれを不服として控訴したところ,原審は,本件請求を棄却した第1審判決を上告人Y2に対する関係でのみ取り消した上,同Y2に対する本件請求を認容する一方,同Y1に対する被上告人の控訴を,控訴の利益を欠くものとして却下した。
4 しかしながら,原審の上記判断は,以下の(1)及び(2)の各点において,是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 被上告人の上告人Y1に対する控訴の適否について
 本件請求に係る訴えは,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟と解するのが相当である(最高裁平成15年(受)第1153号同16年7月6日第三小法廷判決・民集58巻5号1319頁)。したがって,本件請求を棄却した第1審判決主文第2項は,被上告人の上告人Y1に対する請求をも棄却するものであるというべきであって,上記3の訴訟経過に照らせば,被上告人の上告人Y1に対する控訴につき,控訴の利益が認められることは明らかである。
(2) 本件請求に関する判断について
ア 本件請求に係る訴えは,固有必要的共同訴訟と解するのが相当であることは前示のとおりであるところ,原審は,本件請求を棄却した第1審判決を上告人Y2に対する関係でのみ取り消した上,同Y2 に対する本件請求を認容する一方,同Y1に対する控訴を却下した結果,同Y1 に対する関係では,本件請求を棄却した第1審判決を維持したものといわざるを得ない。このような原審の判断は,固有必要的共同訴訟における合一確定の要請に反するものである。
イ そして,原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができると解するのが相当である(最高裁昭和44年(オ)第316号同48年7月20日第二小法廷判決・民集27巻7号863頁参照)。そうすると,当裁判所は,原判決のうち上告人Y2 に関する部分のみならず,同Y1に関する部分も破棄することができるというべきである。
5 以上によれば,上記各点に係る原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は,全部破棄を免れない。そして,上記事実関係によれば,上告人Y2は民法891条5号所定の相続欠格者に当たるというべきところ,記録によれば,同Y2及び同Y1は,第1審及び原審を通じて共通の訴訟代理人を選任し,本件請求の当否につき,全く同一の主張立証活動をしてきたことが明らかであって,本件請求については,同Y2のみならず,同Y1の関係においても,既に十分な審理が尽くされているということができるから,第1審判決のうち同Y2及び同Y1に対する関係で本件請求を棄却した部分を取り消した上,これらの請求を認容すべきである。
 なお,上告審は,上記のような理由により原判決を破棄する旨の判決をする場合には,民訴法319条並びに同法313条及び297条により上告審の訴訟手続に準用される同法140条の規定の趣旨に照らし,必ずしも口頭弁論を経ることを要しないものというべきである。


◆条文
民事訴訟法319条:「上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる。」

同法313条:「前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。」(控訴の規定の準用)

同法297条:「前編第1章から第7章までの規定は、特別の定めがある場合を除き、控訴審の訴訟手続について準用する。ただし、第269条の規定は、この限りでない。」(第一審の訴訟手続の規定の準用)

同法140条:「訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。」(口頭弁論を経ない訴えの却下)


民事訴訟法、最判平成22年3月16日のまとめ


 最判平成22年3月16日は、民事訴訟法304条で、「第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。」と規定されているところ、「原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができる」(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=38703 から)と判断しました。


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 最判平成27年12月14日

民事訴訟法
02 /16 2017

 本訴請求債権が時効消滅したと判断されることを条件とする,反訴における当該債権を自働債権とする相殺の抗弁の許否についての 最判平成27年12月14日を紹介します。

1 本件本訴は,上告人が,貸金業者である被上告人との間で,平成8年6月5日から平成21年11月24日までの間,第1審判決別紙計算書1の「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり行われた継続的な金銭消費貸借取引(以下「本件取引」という。)について,平成8年6月5日から平成12年7月17日までの取
引(以下「第1取引」という。)と平成14年4月15日から平成21年11月24日までの取引(以下「第2取引」という。)を一連のものとみて,各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記過払金の返還等を求める事案である。本件反訴は,被上告人が,上告人に対し,第2取引に基づく貸金の返還等を求める事案である。
2 被上告人は,本件本訴において,本件取引は一連のものではなく,第1取引に基づく上告人の過払金の返還請求権は時効により消滅したと主張し,消滅時効を援用した。これに対し,上告人は,本件本訴において上記過払金の返還請求権が時効により消滅したと判断される場合には,本件反訴において,予備的に同請求権を自働債権とし,第2取引に基づく被上告人の貸金債権を受働債権として対当額で相殺すると主張し,原判決も,これを本件反訴における上告人の抗弁として摘示している。
3 原審は,本件取引は一連のものとはいえず,第1取引に基づく過払金の返還請求権は時効により消滅したと判断したが,上記2の相殺の抗弁につき何ら判断することなく,被上告人の反訴請求のうち第2取引に基づく貸金返還請求等を認容した。
4 そこで,まず,上記2の相殺の抗弁が民訴法142条の趣旨に反して許されないものか否かについて判断する。係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは,重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反し,許されない(最高裁昭和62年(オ)第1385号平成3年12月17日第三小法廷判決・民集45巻9号1435頁参照)。しかし,本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として,反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許されると解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。時効により消滅し,履行の請求ができなくなった債権であっても,その消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には,これを自働債権として相殺をすることができるところ,本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断される場合には,その判断を前提に,同時に審判される反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権とする相殺の抗弁につき判断をしても,当該債権の存否に係る本訴における判断と矛盾抵触することはなく,審理が重複することもない。したがって,反訴において上記相殺の抗弁を主張することは,重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反するものとはいえない。このように解することは,民法508条が,時効により消滅した債権であっても,一定の場合にはこれを自働債権として相殺をすることができるとして,公平の見地から当事者の相殺に対する期待を保護することとした趣旨にもかなうものである。
5 そうすると,原判決のうち被上告人の反訴請求を認容した部分は,上記2の相殺の抗弁についての判断がないため,主文を導き出すための理由の一部が欠けているといわざるを得ず,民訴法312条2項6号に掲げる理由の不備がある。これと同旨をいう論旨は理由があり,原判決のうち上記部分は破棄を免れない。そして,上記2の相殺の抗弁につき,更に審理を尽くした上で必要な判断をさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。その余の上告理由は,違憲及び理由の不備をいうが,その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。



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最判 昭和61年7月10日【 給付訴訟における被告適格/不利益変更の原則】

民事訴訟法
02 /10 2017

  給付訴訟における被告適格と、不利益変更の原則について却下判決と棄却判決のどちらが不利益かという判断をした最判 昭和61年7月10日という判決文を紹介します。

 本件記録によれば、原審は、本件部屋に対する所有権に基づく本件設備の撤去請求について、被上告人らには本件設備を撤去する権限がないから被告適格を欠く不適法な訴えであるとしてこれを却下したが、給付の訴えにおいては、その訴えを提起する者が給付義務者であると主張している者に被告適格があり、その者が当該給付義務を負担するかどうかは本案請求の当否にかかわる事柄であると解すべきであるから、上告人の右訴えは、適法なものというべきであり、したがつてこれを却下した原判決は違法である。しかしながら、上告人は、右訴えの請求原因として、被上告人らは本件壁面の外側に本件設備を設置したから本件設備を撤去すべき義務があると主張し、原審は、右訴えを却下するにあたり、被上告人らが右義務を負う前提として本件設備に対する処分権限を有するか否かについて当事者に主張立証を尽くさせ、審理を遂げているというべきであるから、このような場合においては、当審としては、右請求について原判決を破棄し、事件を原審裁判所に差し戻す必要はなく、その請求の当否について直ちに判断をすることが許されるものと解するのが相当である。そして、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告人らに本件設備を撤去すべき義務がなく、右請求が理由のないものであることは明らかであり、これを棄却すべきこととなるが、その結論は原判決よりも上告人に不利益となり、民訴法三九六条、三八五条により、原判決を上告人に不利益に変更することは許されないので、当裁判所は原判決の結論を維持して上告を棄却するにとどめるほかなく、結局、原判決の前示の違法はその結論に影響を及ぼさないこととなる。論旨は、採用することができない。




【不利益変更禁止の原則】最判 平成27年11月30日

民事訴訟法
02 /10 2017


 訴訟上の和解が成立したことによって訴訟が終了したことを宣言する第1審判決に対し被告のみが控訴した場合における不利益変更禁止の原則についての最高裁判決が平成27年11月30日に出ているので、その判決文を紹介します。

 1 記録によれば,本件の経過等は次のとおりである。
(1) 被上告人は,上告人に対し,原判決別紙物件目録記載の貸室(以下「本件貸室」という。)の所有権に基づく明渡し及び賃料相当損害金の支払を求めて本件訴訟を提起した。
(2) 上告人と被上告人との間には,平成25年5月8日,訴訟上の和解(以下「本件和解」という。)が成立したが,上告人は,同月22日,本件和解の無効を主張して既に終了した訴訟手続の続行を求めて期日指定の申立てをした。
(3) 第1審は,本件訴訟は本件和解が成立したことにより終了した旨の終局判決をした。
(4) 第1審判決に対しては,上告人のみが控訴し,被上告人は控訴も附帯控訴もしなかった。
2 原審は,本件和解は無効であり,被上告人の請求は一部理由があるとして,第1審判決を取り消し,本件和解が無効であることを確認し,上告人に対して,被上告人から40万円の支払を受けるのと引換えに本件貸室を明け渡すべきこと及び賃料相当損害金を支払うべきことを命じ,被上告人のその余の請求をいずれも棄却する旨の判決をした。
3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 訴訟上の和解の無効を主張する者は,当該和解が無効であることの確認を求める訴えを提起することができると解されるが,記録によれば,本件においては,いずれの当事者も本件和解が無効であることの確認は求めていない。それにもかかわらず,主文において本件和解が無効であることを確認した原判決には,当事者が申し立てていない事項について判決をした違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。
(2) また,訴訟上の和解が成立したことによって訴訟が終了したことを宣言する終局判決(以下「和解による訴訟終了判決」という。)は,訴訟が終了したことだけを既判力をもって確定する訴訟判決であるから,これと比較すると,原告の請求の一部を認容する本案判決は,当該和解の内容にかかわらず,形式的には被告にとってより不利益であると解される。したがって,和解による訴訟終了判決である第1審判決に対し,被告のみが控訴し原告が控訴も附帯控訴もしなかった場合において,控訴審が第1審判決を取り消した上原告の請求の一部を認容する本案判決をすることは,不利益変更禁止の原則に違反して許されないものというべきである。
 そして,和解による訴訟終了判決に対する控訴の一部のみを棄却することは,和解が対象とした請求の全部について本来生ずべき訴訟終了の効果をその一部についてだけ生じさせることになり,相当でないから,上記の場合において,控訴審が訴訟上の和解が無効であり,かつ,第1審に差し戻すことなく請求の一部に理由があるとして自判をしようとするときには,控訴の全部を棄却するほかないというべきである。
 これを本件についてみると,和解による訴訟終了判決である第1審判決に対しては,第1審被告である上告人のみが控訴しているのであるから,第1審判決を取り消して第1審原告である被上告人の請求の一部を認容することは,不利益変更禁止の原則に違反して許されず,原審としては,仮に本件和解が無効であり,かつ,被上告人の請求の一部に理由があると認めたとしても,第1審に差し戻すことなく自判する限りは,上告人の控訴の全部を棄却するほかなかったというべきである。それにもかかわらず,原判決は,第1審判決を取り消し,上告人に対し,40万円の支払を受けるのと引換えに本件貸室を明け渡すべきこと及び賃料相当損害金を支払うべきことを命じた上で,被上告人のその余の請求をいずれも棄却したのである。このような原判決の処理には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
4 論旨は以上の趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところに従い,上告人の控訴を棄却することとする。


反訴が併合要件を欠く場合、独立の訴えとして扱うか、却下か?【民事訴訟法 最判昭和41年11月10日】

民事訴訟法
02 /01 2017

 民事訴訟法における最判昭和41年11月10日についての紹介です。

 併合要件を欠く反訴の扱いについて、それ自体独立の訴えとしては有効なのだから、却下することなく、本訴から分離して独立の訴えとして審判すべきであるという説がありますが、判例は、「反訴は訴訟係属中の新訴の提起であり、その併合要件は同時に反訴提起の訴訟要件であるから、この要件を欠く反訴は不適法であり、終局判決をもつて却下すべきものである。」(最判昭和41年11月10日)と判示しています。

 よほど時効が切迫していない限り、権利実現の観点から見れば、新たに訴えを提起すれば事足りると思いますが、択一的に重要であるので、紹介します。


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水刀

2017年4月、LSに入学しました。