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最決平成29年2月21日 - 取締役会設置の非公開会社で、株主総会決議でも代表取締役を選任できるとする定款は有効か?

会社法
04 /03 2017

 タイトルの通り「取締役会設置の非公開会社において、株主総会の決議によっても代表取締役を選任できるとする定款では有効であるか」について論じた最判平成29年2月21日の紹介です。

 同決定は、以下のように判示しました。

1 本件は,相手方Y1(以下「相手方会社」という。)の代表取締役であった抗告人が,平成27年9月30日に開催された相手方会社の株主総会における相手方Y2を相手方会社の取締役に選任する旨の決議及び代表取締役に定める旨の決議は無効であるなどと主張して,相手方らに対し,相手方Y2の取締役兼代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分命令の申立てをした事案である。相手方会社は,取締役会設置会社で,会社法(以下「法」という。)2条5号所定の公開会社でない株式会社(以下「非公開会社」という。)である。相手方会社の定款
には,代表取締役は取締役会の決議によって定めるものとするが,必要に応じ株主総会の決議によって定めることができる旨の定め(以下「本件定め」という。)があり,これが有効か否かが争われている。
2 所論は,取締役会設置会社において,定款で株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができるものとすることは,代表取締役の職務執行に対する取締役会の監督権限を弱めるから,本件定めは無効であるというものである。
3 取締役会を置くことを当然に義務付けられているものではない非公開会社(法327条1項1号参照)が,その判断に基づき取締役会を置いた場合,株主総会は,法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができることとなるが(法295条2項),法において,この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はない。そして,法は取締役会をもって代表取締役の職務執行を監督する機関と位置付けていると解されるが,取締役会設置会社である非公開会社において,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができることとしても,代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限(法362条2項3号)が否定されるものではなく,取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえない。
 以上によれば,取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効であると解するのが相当である。
4 所論の点に関する原審の判断は,以上の趣旨をいうものとして,是認することができる。論旨は採用することができない。


◆最決平成29年2月21日のまとめ
 (1) まず、同決定が非公開会社に限って判断していることから、公開会社においてどのような判断がなされるのかについては、これからの学説・判例に注目すべきでしょう。私見としては、公開会社においても結論は異ならないと思いますが…
 (2) 次に、一読した限り、同決定は、会社法295条2項の解釈問題であると考えるべきでしょう(私見)。
 (3) 択一的には、取締役会設置の非公開会社で、株主総会決議でも代表取締役を選任できるとする定款は有効であると理解しておく必要があるでしょう。



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【会社法 重要判例】最高裁判所第3小法廷判例平成24年4月24日

会社法
01 /12 2017

 「非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合,当該特別決議を欠く瑕疵は上記株式発行の無効原因になる。」という判示をした有名な判例です。会社法判例百選 第3版 にも掲載されている重要な判例です。以下、一部を抜粋して紹介します。

「 旧商法280条ノ21第1項は,株主以外の者に対し特に有利な条件をもって新株予約権を発行する場合には,同項所定の事項につき株主総会の特別決議を要する旨を定めるが,同項に基づく特別決議によって新株予約権の行使条件の定めを取締役会に委任することは許容されると解されるところ,株主総会は,当該会社の経営状態や社会経済状況等の株主総会当時の諸事情を踏まえて新株予約権の発行を決議するのであるから,行使条件の定めについての委任も,別途明示の委任がない限り,株主総会当時の諸事情の下における適切な行使条件を定めることを委任する趣旨のものであり,一旦定められた行使条件を新株予約権の発行後に適宜実質的に変更することまで委任する趣旨のものであるとは解されない。また,上記委任に基づき定められた行使条件を付して新株予約権が発行された後に,取締役会の決議によって行使条件を変更し,これに沿って新株予約権を割り当てる契約の内容を変更することは,その変更が新株予約権の内容の実質的な変更に至らない行使条件の細目的な変更にとどまるものでない限り,新たに新株予約権を発行したものというに等しく,それは新株予約権を発行するにはその都度株主総会の決議を要するものとした旧商法280条ノ21第1項の趣旨にも反するものというべきである。そうであれば,取締役会が旧商法280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合に,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がされているのであれば格別,そのような委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を取締役会決議によって変更することは原則として許されず,これを変更する取締役会決議は,上記株主総会決議による委任に基づき定められた新株予約権の行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き,無効と解するのが相当である。
 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件総会決議による本件委任を受けた取締役会決議に基づき,上場条件をその行使条件と定めて本件新株予約権が発行されたものとみるべきところ,本件総会決議において,取締役会決議により一旦定められた行使条件を変更することができる旨の明示的な委任がされたことはうかがわれない。そして,上場条件の撤廃が行使条件の細目的な変更に当たるとみる余地はないから,本件変更決議のうち上場条件を撤廃する部分は無効というべきである。
(2) 以上のように,本件変更決議のうちの上場条件を撤廃する部分が無効である以上,本件変更決議に従い上場条件が撤廃されたものとしてされた補助参加人らによる本件新株予約権の行使は,当初定められた行使条件に反するものである。そこで,行使条件に反した新株予約権の行使による株式発行の効力について検討する。
 会社法上,公開会社(同法2条5号所定の公開会社をいう。以下同じ。)については,募集株式の発行は資金調達の一環として取締役会による業務執行に準ずるものとして位置付けられ,発行可能株式総数の範囲内で,原則として取締役会において募集事項を決定して募集株式が発行される(同法201条1項,199条)のに対し,公開会社でない株式会社(以下「非公開会社」という。)については,募集事項の決定は取締役会の権限とはされず,株主割当て以外の方法により募集株式を発行するためには,取締役(取締役会設置会社にあっては,取締役会)に委任した場合を除き,株主総会の特別決議によって募集事項を決定することを要し(同法199条),また,株式発行無効の訴えの提訴期間も,公開会社の場合は6箇月であるのに対し,非公開会社の場合には1年とされている(同法828条1項2号)。これらの点に鑑みれば,非公開会社については,その性質上,会社の支配権に関わる持株比率の維持に係る既存株主の利益の保護を重視し,その意思に反する株式の発行は株式発行無効の訴えにより救済するというのが会社法の趣旨と解されるのであり,非公開会社において,株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合,その発行手続には重大な法令違反があり,この瑕疵は上記株式発行の無効原因になると解するのが相当である。所論引用の判例(最高裁昭和32年(オ)第79号同36年3月31日第二小法廷判決・民集15巻3号645頁,最高裁平成2年(オ)第391号同6年7月14日第一小法廷判決・裁判集民事172号771頁)は,事案を異にし,本件に適切でない。
 そして,非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権に株主総会によって行使条件が付された場合に,この行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らして当該新株予約権の重要な内容を構成しているときは,上記行使条件に反した新株予約権の行使による株式の発行は,これにより既存株主の持株比率がその意思に反して影響を受けることになる点において,株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合と異なるところはないから,上記の新株予約権の行使による株式の発行には,無効原因があると解するのが相当である。
 これを本件についてみると,本件総会決議の意味するところは,本件総会決議の趣旨に沿うものである限り,取締役会決議に基づき定められる行使条件をもって,本件総会決議に基づくものとして本件新株予約権の内容を具体的に確定させることにあると解されるところ,上場条件は,本件総会決議による委任を受けた取締役会の決議に基づき本件総会決議の趣旨に沿って定められた行使条件であるから,株主総会によって付された行使条件であるとみることができる。また,本件新株予約権が経営陣の意欲や士気の高揚を目的として発行されたことからすると,上場条件はその目的を実現するための動機付けとなるものとして,本件新株予約権の重要な内容を構成していることも明らかである。したがって,上場条件に反する本件新株予約権の行使による本件株式発行には,無効原因がある。」(同判例から)。

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【会社法】 最高裁判所第一小法廷判決 平成27年2月19日

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【会社法】 最高裁判所第一小法廷判決 平成27年2月19日

会社法
01 /04 2017

  非上場会社が株主以外の者に発行した新株の発行価額が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない場合についての判断についての重要な判決を紹介します。いわゆる有利発行の論点であり、現行会社法でいえば、会社法199条3項の「特に有利な金額」の論点に関するものです。会社法判例百選 第3版 にも掲載されている重要な判例です。

「 非上場会社の株価の算定については,簿価純資産法,時価純資産法,配当還元法,収益還元法,DCF法,類似会社比準法など様々な評価手法が存在しているのであって,どのような場合にどの評価手法を用いるべきかについて明確な判断基準が確立されているというわけではない。また,個々の評価手法においても,将来の収益,フリーキャッシュフロー等の予測値や,還元率,割引率等の数値,類似会社の範囲など,ある程度の幅のある判断要素が含まれていることが少なくない。株価の算定に関する上記のような状況に鑑みると,取締役会が,新株発行当時,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額を決定していたにもかかわらず,裁判所が,事後的に,他の評価手法を用いたり,異なる予測値等を採用したりするなどして,改めて株価の算定を行った上,その算定結果と現実の発行価額とを比較して「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか否かを判断するのは,取締役らの予測可能性を害することともなり,相当ではないというべきである。
 したがって,非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には,その発行価額は,特別の事情のない限り,「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解するのが相当である。」(最高裁判所第一小法廷判決 平成27年2月19日から抜粋)

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【会社法 訴えの利益】役員の解任選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に破産手続開始の決定を受けた場合における訴えの利益

会社法
10 /31 2016

 最判平成21年4月17日が判示した「株式会社役員の解任・選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該会社が破産手続開始の決定を受けた場合の訴えの利益の消長」についての備忘録である。

 判例は、「民法653条は,委任者が破産手続開始の決定を受けたことを委任の終了事由として規定するが,これは,破産手続開始により委任者が自らすることができなくなった財産の管理又は処分に関する行為は,受任者もまたこれをすることができないため,委任者の財産に関する行為を内容とする通常の委任は目的を達し得ず終了することによるものと解される。会社が破産手続開始の決定を受けた場合,破産財団についての管理処分権限は破産管財人に帰属するが,役員の選任又は解任のような破産財団に関する管理処分権限と無関係な会社組織に係る行為等は,破産管財人の権限に属するものではなく,破産者たる会社が自ら行うことができるというべきである。そうすると,同条の趣旨に照らし,会社につき破産手続開始の決定がされても直ちには会社と取締役又は監査役との委任関係は終了するものではないから,破産手続開始当時の取締役らは,破産手続開始によりその地位を当然には失わず,会社組織に係る行為等については取締役らとしての権限を行使し得ると解するのが相当である。…(改行)したがって,株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない…。」(同判例から)と判示した。

 破産法を勉強していない人には、色々とつらい部分があるが、要するに、民法653条柱書きでは、「委任は、次に掲げる事由によって終了する。」とされ、同2号で、「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。」と規定されるから、当該株式会社が破産したら、会社と役員との委任契約は直ちに終了するのであり、本件訴訟で勝訴したとしても、役員たる地位に復活する余地はないから、役員の地位に関する総会決議の取消の訴えは訴えの利益が消滅するのではないかという問題である。

 これについて、判例は、

 同条は、委任者が破産した場合には、委任者が破産により行うことができなくなる行為について受任者もまたできなくなるのだから、委任は目的を達成することができず終了することを示したものである。したがって、役員の選任又は解任のような破産財団に関する管理処分権限と無関係な会社組織に係る行為等は、破産者たる会社が自ら行うことができ、会社につき破産手続開始の決定がされても直ちには会社と取締役又は監査役との委任関係は終了するものではない。

 したがって、会社組織に係る行為等については役員としての権限を行使し得るのであり、本件訴訟で勝訴すれば、役員たる地位に復活するのであるから、訴えの利益が認められる。

 という旨の判示をした。

 覚えるべき点は、当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても、会社と取締役又は監査役との委任関係は終了するものではないこと。それと、訴えの利益が消滅しないことである。


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同判決の判決文(裁判所公式サイト)

水刀

2017年4月、LSに入学しました。