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違法収集証拠排除法則 - 最判平成15年2月14日

刑事訴訟法
01 /24 2017

 はじめに

 最判平成15年2月14日は、最高裁で初めて違法収集証拠排除法則を認めた判例であり、極めて重要な判例であるからここに紹介します。違法収集証拠排除法則の論証については、こちらから。

 事案は、警察官が窃盗容疑で甲を逮捕すべく、甲のもとに赴いたが、警察官は逮捕状を携行していなかった(逮捕状は発布されていた。)。そのため、逮捕状を提示せずに逮捕した。しかし、同警察官は、逮捕状、捜査報告書において、逮捕状を呈示した旨の記録をしたのである。同日、甲は、任意採尿に応じたところ、同検査により覚せい剤成分が検出された(①)。5日後、上記窃盗、覚醒剤取締法違反の両方を理由とする2つの捜索差押令状が発布され、覚醒剤が押収された(②)。
 甲は、①②の証拠は、違法に収集された証拠であるから、証拠として採用できないと主張した事案である。

 最判平成15年2月14日は、①について、「本件逮捕には,逮捕時に逮捕状の呈示がなく,逮捕状の緊急執行もされていない(逮捕状の緊急執行の手続が執られていないことは,本件の経過から明らかである。)という手続的な違法があるが,それにとどまらず,警察官は,その手続的な違法を糊塗するため,前記のとおり,逮捕状へ虚偽事項を記入し,内容虚偽の捜査報告書を作成し,更には,公判廷において事実と反する証言をしているのであって,本件の経緯全体を通して表れたこのような警察官の態度を総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を潜脱し,没却するような重大なものであると評価されてもやむを得ないものといわざるを得ない。そして,このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは,将来における違法捜査抑制の見地からも相当でないと認められるから,その証拠能力を否定すべきである(最判昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁参照)。(改行) 前記のとおり,本件採尿は,本件逮捕の当日にされたものであり,その尿は,上記のとおり重大な違法があると評価される本件逮捕と密接な関連を有する証拠であるというべきである。また,その鑑定書も,同様な評価を与えられるべきものである。」(ナンバリング、参照判例の記載の一部を内容変更しない形で一部変更している。)として、証拠能力を否定した。

 緊急執行として扱えば、適法であった事案ともいえるので、最高裁は、特に、「将来における違法捜査抑制」を重視していることがわかります。また、違法性があるのは窃盗の逮捕手続であり、排除された証拠が覚せい剤の証拠であることについても、見逃せない点で、収集手続により発見された証拠ではなく、収集手続と関連した証拠が排除されています。

 ②について、「本件覚せい剤は,被告人の覚せい剤使用を被疑事実とし,被告人方を捜索すべき場所として発付された捜索差押許可状に基づいて行われた捜索により発見されて差し押さえられたものであるが,上記捜索差押許可状は上記①の鑑定書を疎明資料として発付されたものであるから,証拠能力のない証拠と関連性を有する証拠というべきである。(改行) しかし,本件覚せい剤の差押えは,司法審査を経て発付された捜索差押許可状によってされたものであること,逮捕前に適法に発付されていた被告人に対する窃盗事件についての捜索差押許可状の執行と併せて行われたものであることなど,本件の諸事情にかんがみると,本件覚せい剤の差押えと上記①の鑑定書との関連性は密接なものではないというべきである。(改行) したがって,本件覚せい剤及びこれに関する鑑定書については,その収集手続に重大な違法があるとまではいえず,その他,これらの証拠の重要性等諸般の事情を総合すると,その証拠能力を否定することはできない。」(”(2)”を、”①”に変更しました。)としました。

 「司法審査を経て発付された捜索差押許可状によってされたものであること」によって、違法性が遮断されるのか、違法性が希釈される(希釈の法理)のかについては、争いがあるところですが、裁判所の判断が及んでいることについて証拠能力を認める事情とし、「逮捕前に適法に発付されていた被告人に対する窃盗事件についての捜索差押許可状の執行と併せて行われたものであること」について、不可避的発見の法理を彷彿させる書きぶりとなっています。この文をどのように理解すべきかは、現状保留したいと思います。

 終わりに

 最判平成15年2月14日は、刑事訴訟法判例百選 第9版にも掲載される重要判例であり、役立つ情報を伝えることができたなら嬉しい限りです。



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水刀

2017年4月、LSに入学しました。