司法試験 - ほのぼのと司法試験に挑戦

令和元年司法試験 論文感想

司法試験全般
05 /21 2019
 令和元年の司法試験を受験してきました。

 論文のできについては、勝負できる答案は書けたと思います、思いたいです。時間配分に気を配っていたこともあって、ほぼ全科目において完答しています。短答の方が危険性を感じるので、まずは短答が合格していて欲しいです。読める字を書いていたのかの確認をしていないので、ここも危険性を感じますが…

 以下、各科目ごとの簡単な答案構成と感想です。備忘録的な意味あいが大きいですので、期待しないください。実質的には、自分のできなかったところを述べたものとなっている気もします。

(1)憲法
 去年傾向が変わり、概ねそれと同様の傾向だったと感じます。
 ただ、去年よりも大きな論点が多いので、処理速度の要求度は上がっていると感じます。表現者に対する2種の表現の自由(明確性、広汎性含む)、業者の表現の自由、財産権に対する侵害(債権制限)、及び行政手続法が適用されない(政治的表現の削除に対する反論の機会の付与)といったところが問題となったため、時間がシビアで正直答案構成に時間をかけている余裕がなく、答案を書く練習を増やす必要があると感じました。
 (全部で7つの論点とすれば、)二つの論点で、答案が爆発しましたが、5つの論点についてかけたのでまあよかったと思います。
 ただ、爆発した一つ目の明確性について、「何がフェイクニュースか客観的にわかるのか」という問題意識をもって、虚偽表現は他の信用棄損罪等に照らして考えても、明確性を欠くことにはならない」と書くべきでした。ここについて、大きく失点していると思います。
 もっとも、後二者(財産、手続)の論点を触れることができたのは良かったと思います。
 配点、相対評価次第で、大きく点数が変わりそうな科目だと思います。C-Dが来ればいいなと思います。

(2)行政法
 ①違法性の承継、②無効等確認訴訟の訴訟要件、③裁量権の違法性(行訴法30条)についての問題でした。
 ①については、条文を羅列して一応のあてはめをしていますが、規範を失念してしまって現場で考えたのが、大きなミスでした。②について、「直截的」という文言を出せなったことがミスでした。とはいえ、民訴が提起できるが、無効等確認訴訟を提起できるという結論は出せています。③について、法20条3号の文言が抽象度の高いもので、かつ、公益的見地(1条参照)があり、専門技術的なものでもあるから、裁量がある。B県の「道路ネットワーク」「通行者の安全」「地域の防災」の3点を主張するが、「道路ネットワーク」「地域の防災」に関する事実について、事実誤認や考慮不尽があるとして、違法性を語りました。ほとんど会議録の引用になっていると思います。もっとも、「通行者の安全」についてケチをつけていないのですが…、思いつきませんでした。
 他の受験生もかけているところができていないと思われるので、相対的にまずい答案になっているような気がします。

(3)民法
ア、設問1
 請負の所有権の移転時期は完成した時であると、合意と材料に触れずに書きましたが不安になっています。そして、工作物責任では、全要件(損害及び因果関係含む。)を検討しました。
 結論としては、所有権者はA、工作物責任について占有者であったBは注意をしていたから、Aは責任を負うとしています。
イ、設問2
 Hは、賃貸借契約において、目的物を所有する者が目的物を使用収益させることを提供できるから、賃貸人の地位が移転し、もっとも、二重払いを防止するために登記を要するが、登記をするのであれば、賃借人に請求できると主張する。
 もっとも、Dは、債権譲渡を受け、対抗要件を備えた(民法施行法等)のであり、Hが登記できる時に先立っているから、対抗要件の先立つ具備により、Hに対抗することができる。 といった感じです。
ウ、設問3の答案は、爆発しました。

 設問3がどれだけ響くかだと思います。全体的に、分量が少ないと感じました。結論があっているのかについても、気になります。

(4)商法
ア、設問1
 正直何を聞いているのか分かりませんでした。条文をこねこねして論じ、思いついたことを書いて仕上げました。趣旨があっていることを祈ります。
イ、設問2
 本件新株予約権無償割当てについて、形式的には新株予約権無償割当てであるが、実質的には募集新株予約権の発行であるあから、247条の対象であるとして、株主平等の原則に反しないか。また、主要目的ルールに反しないかを論じました。結論、否定です。
ウ、設問3
 本件決議1が、法令に反して違法か?、監督権限を不当に侵害しないとして合法。本件決議2の前提が変更されたならなば、臨時の株主総会を開くべきであるから、善管注意義務に違反する。として、任務懈怠を認定し、その余の要件を簡単に論じました。

 総合的に、設問1の趣旨次第ですが、一応相対的にできたのではないかなと思っています。上位答案として扱ってくれればと思います。

(5)民訴
ア、設問1
 前段を一般的に管轄合意は他の管轄を排除する目的であると相手方に主張させ、もっとも、今回は管轄を追加する趣旨であると論じました。問いの後段について、裁量的移送の規定を類推適用して、Xに不利な事実を指摘しつつも、なおXの不利益性が大きいとして、要件を認定しました。
イ、設問2
 論点の把握ができず、かなりの時間をとられました。相当試験時間経過後、自白は主要事実にのみ成立し、で、④事実は元々主要事実ではなかったと気づき、そのまま書きました。要件事実から丁寧に論じることができなかったのが悔やまれます。さらに、請求の追加的変更によって、④事実が主要事実となったことについて、この段階では、もろもろ理由を述べて、撤回できるとしました。
ウ、設問3
 条文を丹念に見つつ、自己利用文書性が問題となることを把握し、その要件を①非開示性、②不利益性 (本来出れば、③特段の事情も要件となる。)として、日記は性質上非開示であり、死亡により自由な意思を阻害しないこと、相続人が妻でプライバシーも一応の不利益性があること、本件日記と日記(全体部分)は区別できる事項であることを検討すべきとしました。

(6)刑法
ア、設問1
 結論は、Aに対する窃盗罪と銀行に対する窃盗未遂罪で、併合罪としました。
 窃盗と詐欺の区別についても、一応現場思考で書きました。窃盗既遂を認めているので、実行の着手を認定する必要性があるのか疑問ですが、採点実感が実行の着手を書けと言っていますし、詐欺的行為を始める段階か財物を受け取った段階か、実行の着手時期は論じる意義があると思ったので、後者として論じました。そして、カバンの中に入れて既遂としました。
イ、設問2
 「事後強盗の罪」という、この「の」の意味が当初分からなかったのですが、財物を獲得していないので、事後強盗未遂罪が問題となることに気づき、いい性格をしていると感じました。結論としては、事後強盗未遂罪の共同正犯を肯定です。
 前日に、辰巳の趣旨・規範ハンドブック〈3〉刑事系の133頁(平成30年度版)を読んでいたので、戦うことができました。しかし、論点のレベルが上がっていると思います。もっとも、脅迫罪の共同正犯が成立する説について、一つ・二つ論点のがしがあったことが悔やまれます。もしかしたら、乙の窃盗客体の錯誤も論点かと思い、論じています。
ウ、設問3
 構成要件を認定し、正当防衛、緊急避難を否定し、誤想防衛と同じ処理をして責任故意を阻却する。過失犯については、失念しました。

 総じて、忘れていた設問2の自説ではないものの論点と、設問3の過失犯を書くべきでしたが、設問2について相対的に書けていると思うので、上位であればいいなと思います。

(7)刑訴
ア、設問1
 自分の立場を別件基準説から論じました。別件基準説→任意捜査として任意取調べは可能→高輪グリーンマンション事件(任意取調べの限界)で論じ、反対説は本件基準説で本件横領は捜査届をかなり強引に提出させたこと、3万円と損害が低いことなどの事情から違法であると論じました。この点、勾留が時系列的に合法・違法性がどうであったのかという観点が抜け落ちていたのが大きなミスでしたが、相対的にどうであったのかが気になります。
 (補足、余罪取調べについて論じたことは、「身柄拘束について」問われているので、余剰だったと思います。)
イ、設問2
 公判前整理手続における証拠提出制限の条文を挙げ、証拠提出だけでなく訴因変更命令についても趣旨が及ぶが、提出できなかったものは「やむを得ないもの」として含まれる。本件も、公判で言い出したので「やむを得ないもの」として許される。
 もっとも、公訴事実の同一性は、単一性、同一性のことであり、社会的に同一の事実であり非両立の関係も見られるが、実体法上同一ではなく単位性をみたさない。よって、変更できない。としました。

 総じて、論理や結論が合っているのか、一番不安な科目です。また、規範の正確性に不安を残しますが、論理・結論が合っていれば、上位へ行けるのではないかと思います。

(8)選択
 選択については、その科目についても公開しないつもりです。設問1はよくできましたが、設問2でやらかしたかもしれません。

(9)総じての感想
 憲法、行政法について、直前の見直しができていませんでした。特に行政法の見直しがあれば、もっと規範を正確に書けたと思うので、行政法のノートをしっかりと作りたいと思います。憲法については、最新判例を踏まえた勉強と基礎のアウトプットスピードの向上を目指すべきでした。
 得意の民法ができなかった一方で、苦手の会社法はできたような気がします。来年も、手形法などといった異次元から出題されることのないことを祈ります。どちらの科目も、設問1の分量がどれくらい必要かが分かりませんでした。その辺、今度確認したいです。民訴は、相対的にどうか他の人の答案が見たいところです。
 刑事系は、どちらも傾向が変わったため、それに慣れることが必要だと感じました。ミスがあったものの書けたと思うことにします。
 現状では、憲法(C-E)、行政法(E-F)、民法(E-F)、商法(A-C)、民訴(?)、刑法(A-B)、刑訴(A-D)、選択(A-D)の予想です。民訴が相対的に出来ていて、憲・行・民のどれか2つについて思ったよりもいい成績が来ないと厳しい結果となりそうです。

 ひとまずは、お疲れさまでした。今度については、体力等が回復していから考えます。完全な再現答案は、合否が決定したら、公表するかもしれません。

 刑事系の試験はできたと思うので、下記の刑事系の基本書を紹介するページを見ていただければ、嬉しいです。

 ・【行為無価値】刑法の基本書紹介
 ・刑訴基本書のまとめ

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今日(最大判平成29年11月29日)の判例 - 強制わいせつ罪の判例変更

未分類
11 /29 2017

 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否について、最大判平成29年11月29日が、判例変更を行ったので、これを紹介します。今日は、行政判例百選I 第7版が発売されるなど、色々話題の絶えない一日です。

―以下、理由部分を引用、なお主文の要旨は、上告棄却―
1 弁護人松木俊明,同園田寿の各上告趣意,同奥村徹の上告趣意のうち最高裁昭和43年(あ)第95号同45年1月29日第一小法廷判決・刑集24巻1号1頁(以下「昭和45年判例」という。)を引用して判例違反,法令違反をいう点について
(1) 第1審判決判示第1の1の犯罪事実の要旨は,「被告人は,被害者が13歳未満の女子であることを知りながら,被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をした。」というものである。
原判決は,自己の性欲を刺激興奮させ,満足させる意図はなく,金銭目的であったという被告人の弁解が排斥できず,被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとした第1審判決の事実認定を是認した上で,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして,昭和45年判例を現時点において維持するのは相当でないと説示し,上記第1の1の犯罪事実を認定した第1審判決を是認した。
(2) 所論は,原判決が,平成29年法律第72号による改正前の刑法176条(以下単に「刑法176条」という。)の解釈適用を誤り,強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを要するとした昭和45年判例と相反する判断をしたと主張するので,この点について,検討する。
(3) 昭和45年判例は,被害者の裸体写真を撮って仕返しをしようとの考えで,脅迫により畏怖している被害者を裸体にさせて写真撮影をしたとの事実につき,平成7年法律第91号による改正前の刑法176条前段の強制わいせつ罪に当たるとした第1審判決を是認した原判決に対する上告事件において,「刑法176条前段のいわゆる強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し,婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても,これが専らその婦女に報復し,または,これを侮辱し,虐待する目的に出たときは,強要罪その他の罪を構成するのは格別,強制わいせつの罪は成立しないものというべきである」と判示し,「性欲を刺戟興奮させ,または満足させる等の性的意図がなくても強制わいせつ罪が成立するとした第1審判決および原判決は,ともに刑法176条の解釈適用を誤ったものである」として,原判決を破棄したものである。
(4) しかしながら,昭和45年判例の示した上記解釈は維持し難いというべきである。
ア 現行刑法が制定されてから現在に至るまで,法文上強制わいせつ罪の成立要件として性的意図といった故意以外の行為者の主観的事情を求める趣旨の文言が規定されたことはなく,強制わいせつ罪について,行為者自身の性欲を刺激興奮させたか否かは何ら同罪の成立に影響を及ぼすものではないとの有力な見解も従前から主張されていた。これに対し,昭和45年判例は,強制わいせつ罪の成立に性的意図を要するとし,性的意図がない場合には,強要罪等の成立があり得る旨判示しているところ,性的意図の有無によって,強制わいせつ罪(当時の法定刑は6月以上7年以下の懲役)が成立するか,法定刑の軽い強要罪(法定刑は3年以下の懲役)等が成立するにとどまるかの結論を異にすべき理由を明らかにしていない。また,同判例は,強制わいせつ罪の加重類型と解される強姦罪の成立には故意以外の行為者の主観的事情を要しないと一貫して解されてきたこととの整合性に関する説明も特段付していない。
 元来,性的な被害に係る犯罪規定あるいはその解釈には,社会の受け止め方を踏まえなければ,処罰対象を適切に決することができないという特質があると考えられる。諸外国においても,昭和45年(1970年)以降,性的な被害に係る犯罪規定の改正が各国の実情に応じて行われており,我が国の昭和45年当時の学説に影響を与えていたと指摘されることがあるドイツにおいても,累次の法改正により,既に構成要件の基本部分が改められるなどしている。こうした立法の動きは,性的な被害に係る犯罪規定がその時代の各国における性的な被害の実態とそれに対する社会の意識の変化に対応していることを示すものといえる。
これらのことからすると,昭和45年判例は,その当時の社会の受け止め方などを考慮しつつ,強制わいせつ罪の処罰範囲を画するものとして,同罪の成立要件として,行為の性質及び内容にかかわらず,犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを一律に求めたものと理解できるが,その解釈を確として揺るぎないものとみることはできない。
イ そして,「刑法等の一部を改正する法律」(平成16年法律第156号)は,性的な被害に係る犯罪に対する国民の規範意識に合致させるため,強制わいせつ罪の法定刑を6月以上7年以下の懲役から6月以上10年以下の懲役に引き上げ,強姦罪の法定刑を2年以上の有期懲役から3年以上の有期懲役に引き上げるなどし,「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)は,性的な被害に係る犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処を可能とするため,それまで強制わいせつ罪による処罰対象とされてきた行為の一部を強姦罪とされてきた行為と併せ,男女いずれもが,その行為の客体あるいは主体となり得るとされる強制性交等罪を新設するとともに,その法定刑を5年以上の有期懲役に引き上げたほか,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設するなどしている。これらの法改正が,性的な被害に係る犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方の変化を反映したものであることは明らかである。
ウ 以上を踏まえると,今日では,強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきであって,行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は,その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず,もはや維持し難い。
(5) もっとも,刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そして,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。
 そうすると,刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。
(6) そこで,本件についてみると,第1審判決判示第1の1の行為は,当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから,その他の事情を考慮するまでもなく,性的な意味の強い行為として,客観的にわいせつな行為であることが明らかであり,強制わいせつ罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の結論は相当である。
 以上によれば,刑訴法410条2項により,昭和45年判例を当裁判所の上記見解に反する限度で変更し,原判決を維持するのを相当と認めるから,同判例違反をいう所論は,原判決破棄の理由にならない。なお,このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。
2 弁護人奥村徹の上告趣意のうち,その余の判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でないか,引用の判例が所論のような趣旨を示したものではないから前提を欠くものであり,その余は,単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 よって,刑訴法414条,396条,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官平光信隆,同中原亮一 公判出席
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 小貫芳信 裁判官
鬼丸かおる 裁判官 木内道祥 裁判官 山本庸幸 裁判官 山崎敏充 裁判官
池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官
菅野博之 裁判官 山口 厚 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一)
―引用、終わり―

●最大判平成29年11月29日まとめ
 「このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない」や、「諸外国においても,昭和45年(1970年)以降,性的な被害に係る犯罪規定の改正が各国の実情に応じて行われており,我が国の昭和45年当時の学説に影響を与えていたと指摘されることがあるドイツにおいても,累次の法改正により,既に構成要件の基本部分が改められるなどしている。」といった憲法上気になるところもあります(後者について、これがグローバルスタンダードだからという理由が、判決の理由として書かれる是非についてです。)が、ともあれ、刑法上の論点について新たな判断がなされているのでしっかりとフォローしなければならないでしょう。
 刑法上だけで考えれば、
(1)
 わいせつな行為の該当性は、「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断」する。「したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。」
 という部分の検討が必要になるでしょう。平たく言えば、主観的な目的要件を削り、実行行為についての判断において主観的な事情を考慮することがあるよねということでしょう。

(2)故意について、違法性の認識可能性が必要であるという立場(及び、違法性の認識可能性を独立の要件とする修正責任説)に立てば、「原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。」とあっさりと判断していいのか疑問です。被告人には強制わいせつ罪ではなく強要罪にあたるという法律の錯誤について、実は当該行為が強制わいせつ罪であったという認識可能性がほぼないのですから、判例変更したうえで、強要罪の責任しか認められないという判断の方が適切であったように感じます。なお、違法性の認識可能性が必要であるか否かについては、昭和62年7月16日が曖昧な判断をしています。

 なお、下記報道で、「被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきであ」るという部分を強調しているものがありますが、判例変更上や判決文からは、ここを殊更重要視する必要性はなく、上記の囲み部分の方が重要度が高いでしょう。

著作権法32条1項により引用


受験新報 2017年 12 月号の紹介

司法試験全般
11 /23 2017


 12月号の受験新法が発売されています。12月号では、司法試験の出題趣旨と再現答案から分析された採点表が載っているので、直近の司法試験の研究をしたいと考えている人にお勧めです。(採点表は主要7科目で、選択科目はありません。)

 受験新法の特集には、当たり外れの月があると思いますが、今月号は02月号以来の当たり月でしょう。

【関連記事】
受験新法 2017年02月号 - 特集は重要判例で作られた民事訴訟法論証集

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司法修習生罷免の件で刑法39条を指摘するのは適当なのか。

時事ネタ
01 /21 2017

 司法修習生の男性があれをあれしたために罷免された件について、他ブログで色々と書かれています。にほんブログ村 司法試験予備試験にほんブログ村 司法試験から見ることができるので、気になる人は覗いてみてください。

 私自身最初は、酒に酔ったという事実から、心神喪失等の責任阻却事由の主張は本件でどう扱われているのだろうかという疑問を持ちましたが、しかし、刑法39条の適用はそもそも前提を欠くのではと思い、この記事を作成しました。

 本件の修習生の罷免は、司法修習生に関する規則2条前文でみなし公務員として扱われ、裁判所法68条、同規則18条1号に基づいて罷免が行われる以上、公務員の懲戒免職の判例( 最判昭和52年12月20日)同様に、その適法違法は、裁量権の逸脱濫用があったかどうかについて、判断すれば足り、刑法総論の適用はなく、専ら平等原則、比例原則、もしくは他事考慮の問題であって、刑法上の問題はそもそも生じないと考えるほうが適切かなと思います。

 酒に酔ってのことであるから、そもそもあれをあれしたことについて、考慮することは許されないのではないか。また、酔ってのことであるから、非難可能性が減退しているとして、処分が重過ぎるのではないか。という点について、主張して、なんとか罷免を回避できなかったのか、気になるところです。


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1000円以下のスマホ対応手袋の紹介
 冬の寒い時期に合う記事です。ぜひご覧ください。

今年(2016年)の人気記事を振り返る。
 人気の記事を紹介する記事となっています。ぜひご覧ください。

マークシート用鉛筆の紹介
 予備短答試験前に、筆記具の準備をしませんか。

憲法基本書紹介
 2017年2月8日から公開した記事です。初学者用の憲法基本書についても紹介しています。

著作権判例百選が著作権侵害を主張され出版差止めを受けたが、逆転勝訴で著作権判例百選が出版される。
 有名な事件についての解説です。

トランプが当選したのはなぜなのか、英国EU離脱国民投票から考える。
 政治に興味があれば、覗いていってくれると嬉しいです。


ポケット版 実用六法〈平成29年版〉の紹介

基本書
12 /28 2016


 成美堂から出版されたポケット版 実用六法の紹介です。ポケット版 実用六法は、六法やその周辺の法律についての条文を記載した六法で、本当にポケットに入るレベルのサイズ(※1)で作られ、私の知る限り一番小さい六法です。おそらく六法の中で一番軽いので、持ち運びでなるべく軽い六法を望む人向けの六法です。

 掲載されている法律は、一般的に法学部生が使う条文については掲載されているので、その辺の心配は不要だと思います。また、この軽さで、民法改正案まで掲載されているのは、見事というしかありません。

 ※1:ジーンズなど無理な場合も勿論あります。正直なところ、ぎりぎり入らないことが多いと思います。有斐閣ポケット六法 平成29年版は、どう考えてもポケットには入りませんが、ポケット版 実用六法は、ポケットに入るか試してみる価値があります。

水刀

2017年4月、LSに入学しました。