判例 - ほのぼのと司法試験に挑戦

令和元年司法試験 論文感想

司法試験全般
05 /21 2019
 令和元年の司法試験を受験してきました。

 論文のできについては、勝負できる答案は書けたと思います、思いたいです。時間配分に気を配っていたこともあって、ほぼ全科目において完答しています。短答の方が危険性を感じるので、まずは短答が合格していて欲しいです。読める字を書いていたのかの確認をしていないので、ここも危険性を感じますが…

 以下、各科目ごとの簡単な答案構成と感想です。備忘録的な意味あいが大きいですので、期待しないください。実質的には、自分のできなかったところを述べたものとなっている気もします。

(1)憲法
 去年傾向が変わり、概ねそれと同様の傾向だったと感じます。
 ただ、去年よりも大きな論点が多いので、処理速度の要求度は上がっていると感じます。表現者に対する2種の表現の自由(明確性、広汎性含む)、業者の表現の自由、財産権に対する侵害(債権制限)、及び行政手続法が適用されない(政治的表現の削除に対する反論の機会の付与)といったところが問題となったため、時間がシビアで正直答案構成に時間をかけている余裕がなく、答案を書く練習を増やす必要があると感じました。
 (全部で7つの論点とすれば、)二つの論点で、答案が爆発しましたが、5つの論点についてかけたのでまあよかったと思います。
 ただ、爆発した一つ目の明確性について、「何がフェイクニュースか客観的にわかるのか」という問題意識をもって、虚偽表現は他の信用棄損罪等に照らして考えても、明確性を欠くことにはならない」と書くべきでした。ここについて、大きく失点していると思います。
 もっとも、後二者(財産、手続)の論点を触れることができたのは良かったと思います。
 配点、相対評価次第で、大きく点数が変わりそうな科目だと思います。C-Dが来ればいいなと思います。

(2)行政法
 ①違法性の承継、②無効等確認訴訟の訴訟要件、③裁量権の違法性(行訴法30条)についての問題でした。
 ①については、条文を羅列して一応のあてはめをしていますが、規範を失念してしまって現場で考えたのが、大きなミスでした。②について、「直截的」という文言を出せなったことがミスでした。とはいえ、民訴が提起できるが、無効等確認訴訟を提起できるという結論は出せています。③について、法20条3号の文言が抽象度の高いもので、かつ、公益的見地(1条参照)があり、専門技術的なものでもあるから、裁量がある。B県の「道路ネットワーク」「通行者の安全」「地域の防災」の3点を主張するが、「道路ネットワーク」「地域の防災」に関する事実について、事実誤認や考慮不尽があるとして、違法性を語りました。ほとんど会議録の引用になっていると思います。もっとも、「通行者の安全」についてケチをつけていないのですが…、思いつきませんでした。
 他の受験生もかけているところができていないと思われるので、相対的にまずい答案になっているような気がします。

(3)民法
ア、設問1
 請負の所有権の移転時期は完成した時であると、合意と材料に触れずに書きましたが不安になっています。そして、工作物責任では、全要件(損害及び因果関係含む。)を検討しました。
 結論としては、所有権者はA、工作物責任について占有者であったBは注意をしていたから、Aは責任を負うとしています。
イ、設問2
 Hは、賃貸借契約において、目的物を所有する者が目的物を使用収益させることを提供できるから、賃貸人の地位が移転し、もっとも、二重払いを防止するために登記を要するが、登記をするのであれば、賃借人に請求できると主張する。
 もっとも、Dは、債権譲渡を受け、対抗要件を備えた(民法施行法等)のであり、Hが登記できる時に先立っているから、対抗要件の先立つ具備により、Hに対抗することができる。 といった感じです。
ウ、設問3の答案は、爆発しました。

 設問3がどれだけ響くかだと思います。全体的に、分量が少ないと感じました。結論があっているのかについても、気になります。

(4)商法
ア、設問1
 正直何を聞いているのか分かりませんでした。条文をこねこねして論じ、思いついたことを書いて仕上げました。趣旨があっていることを祈ります。
イ、設問2
 本件新株予約権無償割当てについて、形式的には新株予約権無償割当てであるが、実質的には募集新株予約権の発行であるあから、247条の対象であるとして、株主平等の原則に反しないか。また、主要目的ルールに反しないかを論じました。結論、否定です。
ウ、設問3
 本件決議1が、法令に反して違法か?、監督権限を不当に侵害しないとして合法。本件決議2の前提が変更されたならなば、臨時の株主総会を開くべきであるから、善管注意義務に違反する。として、任務懈怠を認定し、その余の要件を簡単に論じました。

 総合的に、設問1の趣旨次第ですが、一応相対的にできたのではないかなと思っています。上位答案として扱ってくれればと思います。

(5)民訴
ア、設問1
 前段を一般的に管轄合意は他の管轄を排除する目的であると相手方に主張させ、もっとも、今回は管轄を追加する趣旨であると論じました。問いの後段について、裁量的移送の規定を類推適用して、Xに不利な事実を指摘しつつも、なおXの不利益性が大きいとして、要件を認定しました。
イ、設問2
 論点の把握ができず、かなりの時間をとられました。相当試験時間経過後、自白は主要事実にのみ成立し、で、④事実は元々主要事実ではなかったと気づき、そのまま書きました。要件事実から丁寧に論じることができなかったのが悔やまれます。さらに、請求の追加的変更によって、④事実が主要事実となったことについて、この段階では、もろもろ理由を述べて、撤回できるとしました。
ウ、設問3
 条文を丹念に見つつ、自己利用文書性が問題となることを把握し、その要件を①非開示性、②不利益性 (本来出れば、③特段の事情も要件となる。)として、日記は性質上非開示であり、死亡により自由な意思を阻害しないこと、相続人が妻でプライバシーも一応の不利益性があること、本件日記と日記(全体部分)は区別できる事項であることを検討すべきとしました。

(6)刑法
ア、設問1
 結論は、Aに対する窃盗罪と銀行に対する窃盗未遂罪で、併合罪としました。
 窃盗と詐欺の区別についても、一応現場思考で書きました。窃盗既遂を認めているので、実行の着手を認定する必要性があるのか疑問ですが、採点実感が実行の着手を書けと言っていますし、詐欺的行為を始める段階か財物を受け取った段階か、実行の着手時期は論じる意義があると思ったので、後者として論じました。そして、カバンの中に入れて既遂としました。
イ、設問2
 「事後強盗の罪」という、この「の」の意味が当初分からなかったのですが、財物を獲得していないので、事後強盗未遂罪が問題となることに気づき、いい性格をしていると感じました。結論としては、事後強盗未遂罪の共同正犯を肯定です。
 前日に、辰巳の趣旨・規範ハンドブック〈3〉刑事系の133頁(平成30年度版)を読んでいたので、戦うことができました。しかし、論点のレベルが上がっていると思います。もっとも、脅迫罪の共同正犯が成立する説について、一つ・二つ論点のがしがあったことが悔やまれます。もしかしたら、乙の窃盗客体の錯誤も論点かと思い、論じています。
ウ、設問3
 構成要件を認定し、正当防衛、緊急避難を否定し、誤想防衛と同じ処理をして責任故意を阻却する。過失犯については、失念しました。

 総じて、忘れていた設問2の自説ではないものの論点と、設問3の過失犯を書くべきでしたが、設問2について相対的に書けていると思うので、上位であればいいなと思います。

(7)刑訴
ア、設問1
 自分の立場を別件基準説から論じました。別件基準説→任意捜査として任意取調べは可能→高輪グリーンマンション事件(任意取調べの限界)で論じ、反対説は本件基準説で本件横領は捜査届をかなり強引に提出させたこと、3万円と損害が低いことなどの事情から違法であると論じました。この点、勾留が時系列的に合法・違法性がどうであったのかという観点が抜け落ちていたのが大きなミスでしたが、相対的にどうであったのかが気になります。
 (補足、余罪取調べについて論じたことは、「身柄拘束について」問われているので、余剰だったと思います。)
イ、設問2
 公判前整理手続における証拠提出制限の条文を挙げ、証拠提出だけでなく訴因変更命令についても趣旨が及ぶが、提出できなかったものは「やむを得ないもの」として含まれる。本件も、公判で言い出したので「やむを得ないもの」として許される。
 もっとも、公訴事実の同一性は、単一性、同一性のことであり、社会的に同一の事実であり非両立の関係も見られるが、実体法上同一ではなく単位性をみたさない。よって、変更できない。としました。

 総じて、論理や結論が合っているのか、一番不安な科目です。また、規範の正確性に不安を残しますが、論理・結論が合っていれば、上位へ行けるのではないかと思います。

(8)選択
 選択については、その科目についても公開しないつもりです。設問1はよくできましたが、設問2でやらかしたかもしれません。

(9)総じての感想
 憲法、行政法について、直前の見直しができていませんでした。特に行政法の見直しがあれば、もっと規範を正確に書けたと思うので、行政法のノートをしっかりと作りたいと思います。憲法については、最新判例を踏まえた勉強と基礎のアウトプットスピードの向上を目指すべきでした。
 得意の民法ができなかった一方で、苦手の会社法はできたような気がします。来年も、手形法などといった異次元から出題されることのないことを祈ります。どちらの科目も、設問1の分量がどれくらい必要かが分かりませんでした。その辺、今度確認したいです。民訴は、相対的にどうか他の人の答案が見たいところです。
 刑事系は、どちらも傾向が変わったため、それに慣れることが必要だと感じました。ミスがあったものの書けたと思うことにします。
 現状では、憲法(C-E)、行政法(E-F)、民法(E-F)、商法(A-C)、民訴(?)、刑法(A-B)、刑訴(A-D)、選択(A-D)の予想です。民訴が相対的に出来ていて、憲・行・民のどれか2つについて思ったよりもいい成績が来ないと厳しい結果となりそうです。

 ひとまずは、お疲れさまでした。今度については、体力等が回復していから考えます。完全な再現答案は、合否が決定したら、公表するかもしれません。

 刑事系の試験はできたと思うので、下記の刑事系の基本書を紹介するページを見ていただければ、嬉しいです。

 ・【行為無価値】刑法の基本書紹介
 ・刑訴基本書のまとめ

スポンサーサイト



今日(最大判平成29年11月29日)の判例 - 強制わいせつ罪の判例変更

未分類
11 /29 2017

 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否について、最大判平成29年11月29日が、判例変更を行ったので、これを紹介します。今日は、行政判例百選I 第7版が発売されるなど、色々話題の絶えない一日です。

―以下、理由部分を引用、なお主文の要旨は、上告棄却―
1 弁護人松木俊明,同園田寿の各上告趣意,同奥村徹の上告趣意のうち最高裁昭和43年(あ)第95号同45年1月29日第一小法廷判決・刑集24巻1号1頁(以下「昭和45年判例」という。)を引用して判例違反,法令違反をいう点について
(1) 第1審判決判示第1の1の犯罪事実の要旨は,「被告人は,被害者が13歳未満の女子であることを知りながら,被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をした。」というものである。
原判決は,自己の性欲を刺激興奮させ,満足させる意図はなく,金銭目的であったという被告人の弁解が排斥できず,被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとした第1審判決の事実認定を是認した上で,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして,昭和45年判例を現時点において維持するのは相当でないと説示し,上記第1の1の犯罪事実を認定した第1審判決を是認した。
(2) 所論は,原判決が,平成29年法律第72号による改正前の刑法176条(以下単に「刑法176条」という。)の解釈適用を誤り,強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを要するとした昭和45年判例と相反する判断をしたと主張するので,この点について,検討する。
(3) 昭和45年判例は,被害者の裸体写真を撮って仕返しをしようとの考えで,脅迫により畏怖している被害者を裸体にさせて写真撮影をしたとの事実につき,平成7年法律第91号による改正前の刑法176条前段の強制わいせつ罪に当たるとした第1審判決を是認した原判決に対する上告事件において,「刑法176条前段のいわゆる強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し,婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても,これが専らその婦女に報復し,または,これを侮辱し,虐待する目的に出たときは,強要罪その他の罪を構成するのは格別,強制わいせつの罪は成立しないものというべきである」と判示し,「性欲を刺戟興奮させ,または満足させる等の性的意図がなくても強制わいせつ罪が成立するとした第1審判決および原判決は,ともに刑法176条の解釈適用を誤ったものである」として,原判決を破棄したものである。
(4) しかしながら,昭和45年判例の示した上記解釈は維持し難いというべきである。
ア 現行刑法が制定されてから現在に至るまで,法文上強制わいせつ罪の成立要件として性的意図といった故意以外の行為者の主観的事情を求める趣旨の文言が規定されたことはなく,強制わいせつ罪について,行為者自身の性欲を刺激興奮させたか否かは何ら同罪の成立に影響を及ぼすものではないとの有力な見解も従前から主張されていた。これに対し,昭和45年判例は,強制わいせつ罪の成立に性的意図を要するとし,性的意図がない場合には,強要罪等の成立があり得る旨判示しているところ,性的意図の有無によって,強制わいせつ罪(当時の法定刑は6月以上7年以下の懲役)が成立するか,法定刑の軽い強要罪(法定刑は3年以下の懲役)等が成立するにとどまるかの結論を異にすべき理由を明らかにしていない。また,同判例は,強制わいせつ罪の加重類型と解される強姦罪の成立には故意以外の行為者の主観的事情を要しないと一貫して解されてきたこととの整合性に関する説明も特段付していない。
 元来,性的な被害に係る犯罪規定あるいはその解釈には,社会の受け止め方を踏まえなければ,処罰対象を適切に決することができないという特質があると考えられる。諸外国においても,昭和45年(1970年)以降,性的な被害に係る犯罪規定の改正が各国の実情に応じて行われており,我が国の昭和45年当時の学説に影響を与えていたと指摘されることがあるドイツにおいても,累次の法改正により,既に構成要件の基本部分が改められるなどしている。こうした立法の動きは,性的な被害に係る犯罪規定がその時代の各国における性的な被害の実態とそれに対する社会の意識の変化に対応していることを示すものといえる。
これらのことからすると,昭和45年判例は,その当時の社会の受け止め方などを考慮しつつ,強制わいせつ罪の処罰範囲を画するものとして,同罪の成立要件として,行為の性質及び内容にかかわらず,犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを一律に求めたものと理解できるが,その解釈を確として揺るぎないものとみることはできない。
イ そして,「刑法等の一部を改正する法律」(平成16年法律第156号)は,性的な被害に係る犯罪に対する国民の規範意識に合致させるため,強制わいせつ罪の法定刑を6月以上7年以下の懲役から6月以上10年以下の懲役に引き上げ,強姦罪の法定刑を2年以上の有期懲役から3年以上の有期懲役に引き上げるなどし,「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)は,性的な被害に係る犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処を可能とするため,それまで強制わいせつ罪による処罰対象とされてきた行為の一部を強姦罪とされてきた行為と併せ,男女いずれもが,その行為の客体あるいは主体となり得るとされる強制性交等罪を新設するとともに,その法定刑を5年以上の有期懲役に引き上げたほか,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設するなどしている。これらの法改正が,性的な被害に係る犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方の変化を反映したものであることは明らかである。
ウ 以上を踏まえると,今日では,強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきであって,行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は,その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず,もはや維持し難い。
(5) もっとも,刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そして,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。
 そうすると,刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。
(6) そこで,本件についてみると,第1審判決判示第1の1の行為は,当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから,その他の事情を考慮するまでもなく,性的な意味の強い行為として,客観的にわいせつな行為であることが明らかであり,強制わいせつ罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の結論は相当である。
 以上によれば,刑訴法410条2項により,昭和45年判例を当裁判所の上記見解に反する限度で変更し,原判決を維持するのを相当と認めるから,同判例違反をいう所論は,原判決破棄の理由にならない。なお,このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。
2 弁護人奥村徹の上告趣意のうち,その余の判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でないか,引用の判例が所論のような趣旨を示したものではないから前提を欠くものであり,その余は,単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 よって,刑訴法414条,396条,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官平光信隆,同中原亮一 公判出席
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 小貫芳信 裁判官
鬼丸かおる 裁判官 木内道祥 裁判官 山本庸幸 裁判官 山崎敏充 裁判官
池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官
菅野博之 裁判官 山口 厚 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一)
―引用、終わり―

●最大判平成29年11月29日まとめ
 「このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない」や、「諸外国においても,昭和45年(1970年)以降,性的な被害に係る犯罪規定の改正が各国の実情に応じて行われており,我が国の昭和45年当時の学説に影響を与えていたと指摘されることがあるドイツにおいても,累次の法改正により,既に構成要件の基本部分が改められるなどしている。」といった憲法上気になるところもあります(後者について、これがグローバルスタンダードだからという理由が、判決の理由として書かれる是非についてです。)が、ともあれ、刑法上の論点について新たな判断がなされているのでしっかりとフォローしなければならないでしょう。
 刑法上だけで考えれば、
(1)
 わいせつな行為の該当性は、「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断」する。「したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。」
 という部分の検討が必要になるでしょう。平たく言えば、主観的な目的要件を削り、実行行為についての判断において主観的な事情を考慮することがあるよねということでしょう。

(2)故意について、違法性の認識可能性が必要であるという立場(及び、違法性の認識可能性を独立の要件とする修正責任説)に立てば、「原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。」とあっさりと判断していいのか疑問です。被告人には強制わいせつ罪ではなく強要罪にあたるという法律の錯誤について、実は当該行為が強制わいせつ罪であったという認識可能性がほぼないのですから、判例変更したうえで、強要罪の責任しか認められないという判断の方が適切であったように感じます。なお、違法性の認識可能性が必要であるか否かについては、昭和62年7月16日が曖昧な判断をしています。

 なお、下記報道で、「被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきであ」るという部分を強調しているものがありますが、判例変更上や判決文からは、ここを殊更重要視する必要性はなく、上記の囲み部分の方が重要度が高いでしょう。

著作権法32条1項により引用


思想良心の自由の判例 - 最判平成23年6月6日 - 憲法

司法試験全般
08 /04 2017

 思想良心の自由の判例には有名な「ピアノ伴奏事件」(最判平成19年2月27日)が存在しますが、最判平成23年6月6日がピアノ伴奏事件よりも深く、分かりやすい論証を行っています。これからの司法試験等においては、平成23年判例がリーディングケース(司法試験対策で引用・参照される判例という意味)となると思いますので、これを紹介します。

 ちなみに、ピアノ伴奏事件では、
(1)上記職務命令は「君が代」が過去の我が国において果たした役割に係わる同教諭の歴史観ないし世界観自体を直ちに否定するものとは認められないこと,(2)入学式の国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をする行為は,音楽専科の教諭等にとって通常想定され期待されるものであり,当該教諭等が特定の思想を有するということを外部に表明する行為であると評価することは困難であって,前記職務命令は前記教諭に対し特定の思想を持つことを強制したりこれを禁止したりするものではないこと,(3)前記教諭は地方公務員として法令等や上司の職務上の命令に従わなければならない立場にあり,前記職務命令は,小学校教育の目標や入学式等の意義,在り方を定めた関係諸規定の趣旨にかなうものであるなど,その目的及び内容が不合理であるとはいえないことなど判示の事情の下では,前記職務命令は,前記教諭の思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するということはできない。
 と判示しています (最判平成19年2月27日の裁判所HP、判決要旨から)。

 最高裁判例平成23年6月6日の事案は、以下のようなものです。教員が卒業式等において国歌(起立)斉唱行為を行わなかったために不利益処分を受けました。「日の丸」や「君が代」が過去の我が国において果たした役割に関わる歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念を有する者として国歌斉唱を行わなかったのであるから、当該処分は、思想良心の自由に反し、違法であるとの主張をしました。なお、争い方としては、国家賠償訴訟を選択しています。

 これについて、最判平成23年6月6日は、
(1) … 本件各職務命令の発出当時,公立高等学校における卒業式等の式典において,国旗としての「日の丸」の掲揚及び国歌としての「君が代」の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であって,学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,かつ,そのような所作として外部からも認識されるものというべきである。したがって,上記国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,その性質の点から見て,上告人らの有する歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものとはいえず,上告人らに対して上記国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務命令は,上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。また,上記国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,その外部からの認識という点から見ても,特定の思想又はこれに反対する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であるといえるのであって,本件各職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反対する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。そうすると,本件各職務命令は,これらの観点において,個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。
(2) もっとも,上記国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるということができる。そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものではないとはいえ,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなる限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。
 そこで,このような間接的な制約について検討するに,個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,社会一般の規範等と抵触する場面において,当該外部的行動に対する制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限によってもたらされる上記の間接的な制約も許容され得るものというべきである。そして,職務命令においてある行為を求められることが,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行動を求められることとなる限りにおいて,当該職務命令が個人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があると判断される場合にも,職務命令の目的及び内容には種々のものが想定され,また,これによってもたらされる上記の制約の態様等も,職務命令の対象となる行為の内容及び性質並びにこれが個人の内心に及ぼす影響その他の諸事情に応じて様々であるといえる。したがって,このような間接的な制約が許容されるか否かは,職務命令の目的及び内容並びにこれによってもたらされる上記の制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
 これを本件についてみるに,本件各職務命令に係る国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,前記のとおり,上告人らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素を含むことから,そのような敬意の表明には応じ難いと考える上告人らにとって,その歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動となるものである。この点に照らすと,本件各職務命令は,一般的,客観的な見地からは式典における慣例上の儀礼的な所作とされる行為を求めるものであり,それが結果として上記の要素との関係においてその歴史観ないし世界観に由来する行動との相違を生じさせることとなるという点で,その限りで上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があるものということができる。
 他方,学校の卒業式や入学式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。法令等においても,学校教育法は,高等学校教育の目標として国家の現状と伝統についての正しい理解と国際協調の精神の涵養を掲げ(同法42条1号,36条1号,18条2号),同法43条及び学校教育法施行規則57条の2の規定に基づき高等学校教育の内容及び方法に関する全国的な大綱的基準として定められた高等学校学習指導要領も,学校の儀式的行事の意義を踏まえて国旗国歌条項を定めているところであり,また,国旗及び国歌に関する法律は,従来の慣習を法文化して,国旗は日章旗(「日の丸」)とし,国歌は「君が代」とする旨を定めている。そして,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条2項,地方公務員法30条,32条)に鑑み,公立高等学校の教職員である上告人らは,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地方公務員法に基づき,高等学校学習指導要領に沿った式典の実施の指針を示した本件通達を踏まえて,その勤務する当該学校の各校長から学校行事である卒業式等の式典に関して本件各職務命令を受けたものである。これらの点に照らすと,公立高等学校の教職員である上告人らに対して当該学校の卒業式や創立記念式典という式典における慣例上の儀礼的な所作として国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務命令は,高等学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものであるということができる。
 以上の諸事情を踏まえると,本件各職務命令については,前記のように上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びにこれによってもたらされる上記の制約の態様等を総合的に較量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものというべきである。
(3) 以上の諸点に鑑みると,本件各職務命令は,上告人らの思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当である。
 と判示しました。

最判平成23年6月6日の分析

 (1)において、ピアノ伴奏事件の(2)と同様の判断を行い、「本件各職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反対する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。」=「個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するもの」ではないと判断します。

 言い換えれば、思想良心の自由(「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」(憲法19条))の教科書的な説明として、内心の自由は絶対的に保障されると言われますが、具体的には、①特定の思想を持つことを強制すること、②特定の思想を持つことを禁止すること、③特定の思想の有無について告白を強要することが、公権力が行ってはならないものとして絶対的に保障されると示しています。

 ここまではピアノ伴奏事件(最判平成19年2月27日)と同じでしたが、続く(2)において、思想良心の自由についての間接的な制約の有無の検討が始まります。
 ちなみに、ピアノ伴奏事件(最判平成19年2月27日)でも、間接的制約があることを明言してはいないものの「本件職務命令は,その目的及び内容において不合理で」はない。との判断が示されています。ただし、この判断についてどのように理解すべきかについては対立がありました。以下、最判平成23年6月6日の間接的な制約の有無の検討の部分の引用です。

 「国歌斉唱の際の(国旗に向かって行う)起立斉唱行為は,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為である…。そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,…(起立斉唱行為)を求められることは,…,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなる(ので)…,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面がある…。」として、19条について間接的な制約があることを正面から肯定します。
 「内心の自由については19条の問題であり、外部的行動については21条の問題である」という命題に従えば、本件は21条の問題となります。しかしながら、最判平成23年6月6日は、外部的行動についても19条の問題となりえることを正面から認めました。自らが行いたくない(応じ難い)外部的行為の命令についての問題となる根拠条文は憲法21条ではなく憲法19条であることや、上記命題について修正ないし例外が発生したことについて注意が必要です。

 そしてその判断については、「個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,社会一般の規範等と抵触する場面において,当該外部的行動に対する制限が必要かつ合理的なものである場合には,…許容され得る…。そして,…,職務命令の目的及び内容には種々のものが想定され,また,これによってもたらされる上記の制約の態様等も,職務命令の対象となる行為の内容及び性質並びにこれが個人の内心に及ぼす影響その他の諸事情に応じて様々である…。したがって,このような間接的な制約が許容されるか否かは,職務命令の目的及び内容並びにこれによってもたらされる上記の制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断する」と判断しています。

 ここで、職業選択の自由で有名な薬事法判決と比較してみると…。「職業は、…、その種類、性質、内容、社会的意義及び影響がきわめて多種多様であるため、その規制を要求する社会的理由ないし目的も、国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで千差万別で、その重要性も区々にわたるのである。そしてこれに対応して、現実に職業の自由に対して加えられる制限も、あるいは特定の職業につき私人による遂行を一切禁止してこれを国家又は公共団体の専業とし、あるいは一定の条件をみたした者にのみこれを認め、更に、場合によつては、進んでそれらの者に職業の継続、遂行の義務を課し、あるいは職業の開始、継続、廃止の自由を認めながらその遂行の方法又は態様について規制する等、それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなるのである。それ故、これらの規制措置が憲法二二条一項に…(反するか)どうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。」
 以上のように、とても類似していることがわかります。精神的自由権の違憲性の判断については比較衡量論で行うことが、思想良心の自由においても妥当することがわかります。

 そして、最判平成23年6月6日は、あてはめにおいて、「本件各職務命令は,歴史観ないし世界観に由来する行動との相違を生じさせることとなるという…限りで上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面がある…。(改行)他方,学校の卒業式…等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要である…。法令等においても,…(省略)…。そして,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条2項,地方公務員法30条,32条)に鑑み,…教職員…は,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地方公務員法に基づき,高等学校学習指導要領に沿った式典の実施の指針を示した本件通達を踏まえて,…本件各職務命令を受けたものである。これらの点に照らすと,…本件各職務命令は,高等学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものであるということができる。」として、上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められる。と判断しました。

 ここからは自論になりますが、少々あてはめが雑な感じがします。例えば、式典の出席が必要不可欠であったのか(欠席の選択肢はなかったのか。)といった視点からも、説得的に説明してほしかったなと思います。



----よければブログ村のバナーのクリックをお願いします。
にほんブログ村 資格ブログ 司法試験予備試験へ

刑事訴訟法判例百選 第10版の発売!

基本書
05 /13 2017

 刑事訴訟法判例百選の最新10版が発売されました。
 6年ぶりの改訂になります。GPS捜査が強制処分であること、GPS捜査が強制処分法定主義に服することなどを判示した最判平成29年3月15日を含めた判例が掲載されています。

 刑事訴訟法の勉強には判例の検討が必要不可欠であり、人によっては基本書なしで授業と判例百選のみで勉強をしている人もいるくらい、本書刑事訴訟法判例百選は重要な判例集です。

 前版の記事で書きましたが、刑訴判例百選を意識した試験問題が作られることはよく見られるところであり、司法試験受験生はもちろん、LS入試を受ける人にとっても必須の教材です。

 これから刑事訴訟法の勉強を始める人、勉強をしている人におすすめの一冊です。



最決平成29年2月21日 - 取締役会設置の非公開会社で、株主総会決議でも代表取締役を選任できるとする定款は有効か?

会社法
04 /03 2017

 タイトルの通り「取締役会設置の非公開会社において、株主総会の決議によっても代表取締役を選任できるとする定款では有効であるか」について論じた最判平成29年2月21日の紹介です。

 同決定は、以下のように判示しました。

1 本件は,相手方Y1(以下「相手方会社」という。)の代表取締役であった抗告人が,平成27年9月30日に開催された相手方会社の株主総会における相手方Y2を相手方会社の取締役に選任する旨の決議及び代表取締役に定める旨の決議は無効であるなどと主張して,相手方らに対し,相手方Y2の取締役兼代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分命令の申立てをした事案である。相手方会社は,取締役会設置会社で,会社法(以下「法」という。)2条5号所定の公開会社でない株式会社(以下「非公開会社」という。)である。相手方会社の定款
には,代表取締役は取締役会の決議によって定めるものとするが,必要に応じ株主総会の決議によって定めることができる旨の定め(以下「本件定め」という。)があり,これが有効か否かが争われている。
2 所論は,取締役会設置会社において,定款で株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができるものとすることは,代表取締役の職務執行に対する取締役会の監督権限を弱めるから,本件定めは無効であるというものである。
3 取締役会を置くことを当然に義務付けられているものではない非公開会社(法327条1項1号参照)が,その判断に基づき取締役会を置いた場合,株主総会は,法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができることとなるが(法295条2項),法において,この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はない。そして,法は取締役会をもって代表取締役の職務執行を監督する機関と位置付けていると解されるが,取締役会設置会社である非公開会社において,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができることとしても,代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限(法362条2項3号)が否定されるものではなく,取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえない。
 以上によれば,取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効であると解するのが相当である。
4 所論の点に関する原審の判断は,以上の趣旨をいうものとして,是認することができる。論旨は採用することができない。


◆最決平成29年2月21日のまとめ
 (1) まず、同決定が非公開会社に限って判断していることから、公開会社においてどのような判断がなされるのかについては、これからの学説・判例に注目すべきでしょう。私見としては、公開会社においても結論は異ならないと思いますが…
 (2) 次に、一読した限り、同決定は、会社法295条2項の解釈問題であると考えるべきでしょう(私見)。
 (3) 択一的には、取締役会設置の非公開会社で、株主総会決議でも代表取締役を選任できるとする定款は有効であると理解しておく必要があるでしょう。



----よければブログ村のバナーのクリックをお願いします。
にほんブログ村 資格ブログへ

水刀

2017年4月、LSに入学しました。